研究課題/領域番号 |
16K09428
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
早乙女 雅夫 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (70509512)
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研究分担者 |
佐藤 洋 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (30293632) [辞退]
林 秀晴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50135258) [辞退]
加藤 秀樹 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80314029) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インスリン抵抗性 / ミトコンドリア形態異常 / 虚血耐性 / 心筋代謝 |
研究実績の概要 |
【研究成果】 糖尿病ラット(Goto-Kakizaki Rat:15週齢)およびコントロールラット(Wister Rat:15週齢)の摘出心病理所見を観察したところ、糖尿病ラットでは明らかな心肥大と左室心室筋の線維化が認められた。電子顕微鏡による観察ではミトコンドリア形態に大きな変化は認められなかったが、心筋細胞内のミトコンドリア形態調節蛋白(分裂蛋白:DRP1、MFF、融合蛋白:Mfn2、OPA1)発現では、DRP1のみに明らかな発現増強が認められていた。そのため、現在はミトコンドリア分裂タンパク(dynamin related protein 1: DRP1)阻害剤(mdivi1; 1mg/body or 25mg/body)をラット腹腔内に投与してその結果を評価している。 また、DRP1はAMPK活性化によって発現が抑制さるため、AICARまたはMetformin(AMPK活性化剤)による効果も検討中である。 また、左前下行枝結索を行い左室機能を評価したところ、糖尿病ラットはコントロールに比べて虚血耐性を示していた。糖尿病ラットの虚血耐性効果はERK1/2阻害剤(U0126)または直接レニン阻害剤(Aliskiren)によって減弱されるため、細胞内レニン活性とERK1/2を介した反応であることが示唆された。糖尿病ラットのミトコンドリア膜電位はレニン負荷によって過分極となり、mitochondrial permeability transition pore開口に対しても耐性を示していた。以上から糖尿病心筋では細胞内レニンがミトコンドリア機能の調節を介して心筋保護に働いていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病モデルにおいてコンダクションカテーテルによる左室拡張障害の評価はできていないが、糖尿病心筋症の病態を作り出せており、虚血耐性における細胞内レニンとミトコンドリアの関係についての新たな知見を見出すことができた。また、ミトコンドリア分裂タンパク(DRP1)がAMPKを介して心筋のapoptosisを制御することについて論文発表することができているため、研究プロジェクト全体として進捗は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
コンダクションカテーテルまたはラット心エコーを用いて、もういちど糖尿病ラットの拡張障害評価を試みる。ミトコンドリア分裂タンパク阻害剤(mdivi1)やAMPK活性化剤(Metformin)の投与効果については検討を続ける。 また、糖尿病性心筋における細胞内レニンとミトコンドリア分裂タンパクとの関連性については、新しい研究としてプランを立て直し検討を続ける。 得られた知見は、平成29年3月に行われた第81回日本循環器学会総会で発表している。 また平成29年8月に予定されているヨーロッパ心臓病学会での採択も決定しており、今年度をめどに論文する予定になっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度研究では現存する実験機材で研究可能であったため、大きな物品購入が必要なかった。そのため、次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度にはコンダクションカテーテルと動物用心エコーの購入が必要であり、このために次年度使用額を用いる予定である。
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