研究課題/領域番号 |
16K09429
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥村 貴裕 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60635598)
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研究分担者 |
森本 竜太 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00755499)
安田 宜成 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60432259)
坂東 泰子 (暮石泰子) 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60452190)
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 拡張型心筋症 / FGF23 / 予後 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、心筋におけるKlotho-fibroblast growth factor(FGF)系の発現と心機能および心形態の改善(リバースリモデリング)あるいは臨床的予後との関連を検討し、治療や発症予防における新たなターゲットとしての可能性を探索することである。研究代表者らは、心筋生検を含む各種精査により二次性心筋症が否定された拡張型心筋症患者44例を対象として、末梢血、大動脈(冠動脈入口部)および冠静脈洞での血液検体を収集し、血中FGF23濃度を測定した。末梢血FGF23濃度は、推定糸球体濾過量と有意な相関を認めた。さらに、末梢血FGF23高値群では、低値群と比較して、心臓死および心不全増悪による入院で定義された複合心イベントリスクが有意に高値であった。いっぽう、大動脈および冠静脈洞におけるFGF23濃度で検討した場合、両群間に有意な予後の差を認めなかった。さらに、冠動脈洞-大動脈FGF濃度差でも、両群間に有意な予後の差を認めなかった。本研究結果は、血中FGF23濃度は腎機能を反映し、拡張型心筋症の将来的な心イベントを予測しうる可能性が示唆された。しかしながらこれまでに、心筋検体における線維化率を(collagen volume fraction)とFGF23発現量の間に直接的に有意な相関関係は得られていないが、末梢血FGF23濃度はトロポニンT濃度との弱い相関を示した。いっぽう、末梢血FGF23濃度と高感度C反応蛋白との間に、有意な相関関係は得られなかった。引き続き、解析対象となる拡張型心筋症症例数を増やしたうえで再解析を行う方針とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者らは当初、心筋疾患におけるKlotho-FGF系の発現量を測定し、収縮関連蛋白SERCA2a、phospholamban、troponin-T、troponin-Iとの関連を検討することを計画した。さらに、FGF発現量と心筋病理学的構造変化あるいは心機能、臨床的な予後との関連検討を予定した。これまでに、拡張型心筋症患者における末梢血FGF23発現量と将来的な心イベントとの関連を明らかにしたが、線維化等の組織構造変化との直接的に有意な相関関係は示せていない。そのため、当初の仮説を検証すべく、1年間の研究期間延長申請を行ったうえで検討症例数を増やし、末梢血、大動脈(冠動脈入口部)および冠静脈洞、各部位でのFGF濃度との関連を再評価することとしている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者らは、これまでに拡張型心筋症患者における末梢血FGF23濃度と臨床的予後との関連を示した。しかしながら、現時点でFGF23濃度と心筋線維化およびリモデリングとの直接的な関連を示す成果は得られていない。このため、最終年度においては、当初の仮説を検証すべく、さらなる症例数の確保に努め、心筋の組織構造的変化との関連検討を進めていく。また、これまでに得られた臨床的な予後との関連に関する成果を学会発表や論文等で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度、拡張型心筋症における末梢血FGF23濃度と臨床的予後との関連を示したが、研究遂行に想定以上に時間を要し、現時点で成果を公表できていない。また、当初仮説したFGF23発現量と心筋線維化率の直接的な相関は得られておらず、同解析および成果公表のための未使用額が生じた。 (使用計画)上記理由により、1年間の研究期間延長を申請し、さらなる検討症例数の確保を行うとともに、FGF発現量と心筋の組織構造的変化の関連解析を進め、得られた成果を学会や論文等で広く公表する予定である。昨年度からの繰り越し費用をこれに充てる。
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