研究課題/領域番号 |
16K09433
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塚本 泰正 大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (80747072)
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研究分担者 |
大谷 朋仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30623897)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 心不全 / メタゲノム |
研究実績の概要 |
心不全患者では腸内細菌の増加が認められており、それらは心機能障害による腸管の血流低下やうっ血およびこれら腸管循環障害に伴う腸管内皮機能障害に関連していると考えられている。また逆に腸管機能低下やそれに伴う腸内細菌の増加が炎症の原因となり心不全発症や病態増悪に関連することも示唆されている。本研究の目的は、メタゲノム解析により心不全患者の腸内細菌叢の詳細な解析を行い、心不全における腸内細菌叢組成の変化について検証することである。 これまでに急性心不全もしくは慢性心不全の急性増悪のため当院に入院加療となった症例(心不全群)および対照群として検査目的等で入院となった非心不全症例より糞便検体を採取してきた。これらのうち、適切に糞便検体を採取しえた左室収縮機能障害を伴う心不全群28症例、対照群19症例について、協力研究機関である大阪大学微生物病研究所感染症メタゲノム研究分野にメタゲノム解析を行った。得られた塩基配列から腸内細菌を分類し、群間で比較検討を行ったところ、心不全群と対照群の間に腸内細菌の多様性に差異を認めた。また、心不全群の腸内細菌はSMB53の占める割合が対照群と比して有意に低い一方で、StreptococcusやVeillonellaの比率が有意に高いことが示された。これらの結果について学会発表を行った。また、研究結果についてCirculation Journal誌に投稿し、論文として発表(Circ J. 2018 Mar 30. doi: 10.1253/circj.CJ-17-1285.)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
対象症例の選定および研究への同意が順調に得られ、目標とする症例数の検体を採取しえたため。
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今後の研究の推進方策 |
心不全群と対照群の間に腸内細菌叢の差異がみられた機序の解明のため、今後心不全群と対照群における脂質プロファイルなどについて検討を行う。本研究にエントリーされた心不全群の症例の中には入院時(心不全治療を行う前)および治療にて心不全の病態が改善した後など、異なる時期において検体を複数採取しえた症例も存在する。これらについても順次メタゲノム解析、比較検討を行うことで心不全に対する治療による血行動態の変化が腸内細菌叢へ与える影響を評価していく。 また、心不全により腸管のうっ血をきたしやすいといわれている成人先天性心疾患患者の臓器うっ血と腸内細菌の関連についても検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)別経費にて購入した物品を研究に用いたことにより、物品費が当初予定していた使用額より少額となった。(使用計画)検査キットの購入やメタゲノム解析費用として使用する予定。
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