心不全患者では腸内細菌の増加が認められており、それらは心機能障害による腸管の血流低下やうっ血およびこれら腸管循環障害に伴う腸管内皮機能障害に関連していると考えられている。また逆に腸管機能低下やそれに伴う腸内細菌の増加が炎症の原因となり心不全発症や病態増悪に関連することも示唆されている。 本研究の目的は、メタゲノム解析により心不全患者の腸内細菌叢の詳細な解析を行い、心不全における腸内細菌叢組成の変化について検証することである。 これまでに急性心不全もしくは慢性心不全の急性増悪のため当院に入院加療となった症例(心不全群)および対照群として検査目的等で入院となった非心不全症例より糞便検体を採取してきた。これらのうち、適切に糞便検体を採取しえた左室収縮機能障害を伴う心不全群28症例、対照群19症例について、協力研究機関である大阪大学微生物病研究所感染症メタゲノム研究分野にメタゲノム解析を行った。得られた塩基配列から腸内細菌を分類し、群間で比較検討を行ったところ、心不全群と対照群の間に腸内細菌の多様性に差異を認めた。また、心不全群の腸内細菌はSMB53の占める割合が対照群と比して有意に低い一方で、StreptococcusやVeillonellaの比率が有意に高いことが示された。これらの結果について学会発表および論文での発表を行った。 平成30年度は新たに腸内細菌叢の追加解析を行い、胆汁酸や脂質プロファイルもあわせた検討を行い、腸内細菌叢と代謝との関連について検討を行った。
|