心原性脳塞栓症は非常に予後の悪い重症脳梗塞となり、超高齢化社会を迎えた我が国において非常に重要な”Common”Diseaseとなっている。「2015年日本人の食事摂取基準」では脂質についてその摂取量のみならず脂肪酸のバランスを含めて包括的に管理することが重要とされている。n-3系不飽和脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)は「善玉脂肪酸」と考えられ、多彩な抗炎症作用や抗血小板作用を有することがすでに明らかにされている。 我々は現在、心房細動の既往の有無で患者の血中脂肪酸プロファイルに違いがないか、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて解析を行っている。興味深いことに海外では健康被害を及ぼすことから規制対象となっているトランス脂肪酸のひとつであるエライジン酸の血中濃度が心房細動の既往を有する患者では高い傾向にあることを明らかにした。 さらにマウスを用いたトランス脂肪酸負荷後の向/抗血栓性変化を検討した。まず、エライジン酸負荷したマウスに投与後二週間での血中エライジン酸の上昇を質量分析を用いて確認した。結果、経口負荷にて、血中のエライジン酸濃度の上昇が確認でき、エライジン酸負荷モデルとして有効であることが証明された。 次に、静脈血栓モデルの現在のゴールドスタンダードである、下大静脈結紮モデルをもちいて、エライジン酸負荷により、血栓サイズの変化の有無を解析した。 コントロールとしてはオレイン酸を用いた。結果、エライジン酸負荷により、やや大型の血栓が形成される傾向はあるものの、統計学的有意差は認めなかった。この原因としては、下大静脈結紮モデル後の血栓サイズは分枝の有無によって影響されることが考えられる。
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