研究課題
わが国では社会の高齢化とともに心不全患者が増加の一途にあり、心不全パンデミックと呼ばれる状況に陥っている。死亡者数の増加に加え退院後の高率な再入院のため、医療経済の面でも大きな問題となっている。治療効果を高めるには、薬剤の服用や日常生活管理に対するアドヒアランスが重要な位置づけとなる。アドヒアランスの向上には患者教育が有用と推察されており、我々は多職種による患者教育が再入院を含む退院後の臨床イベント発生率低下に有用なツールであることを報告しているが、必ずしも全患者で効果が出ているわけではない。我々の少数例を用いた後ろ向き研究では患者のego(自我)が教育効果に影響することが示唆された。この我々の結果を受けて、過去の研究において患者教育効果に関して一致した結論に至っていない理由が、各研究の対象患者間のegoに相違があり、そのため教育効果に相違が生じてしまったためではないかと推察するに至った。本研究では過去の我々の研究よりも対象患者を増やし、患者のegoが教育効果に与える影響を前向きに検討する。患者のegoが教育効果に影響を与える場合は、現行の教育方法が有効な患者を選択し集中的な教育を行うとともに、現行の方法が無効な患者に対する新たなアプローチの構築に結びつける。平成30年度は、28、29年度に引き続き患者登録を継続し、現在276名の患者から研究参加の同意を得ることができている。この中の51名の患者のデータを解析したところ、全体では患者教育によりEuropean Heart Failure Self-Care Behavior Scaleの改善が得られていたが、egoの中でAdapted ChildおよびNurturing Parentが低い患者群では教育による行動変容改善が乏しことが明らかとなった。今後、全登録患者のフォローアップを行い、結果の論文化を目指す。
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