肥大型心筋症の病因遺伝子解析と病態形成機構の解明

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 16K09440
• 研究機関: 高知大学
• 研究代表者: 久保 亨 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (80325422)
• 研究分担者: 北岡 裕章 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (10274375)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: 肥大型心筋症 / サルコメア遺伝子 / 予後 / 突然死

研究実績の概要

肥大型心筋症の病因遺伝子変異評価として、サルコメア蛋白遺伝子を中心に解析を行った。サンガー法にてダイレクトシークエンスを施行し、6つのサルコメア蛋白遺伝子（MYH7, MYBPC3, TNNT2, TNNI3, TPM1, ACTC）を対象に解析を行った。209家系中62家系（全体の30%、家族性であることが判明している例に限ると62%）に病因変異を疑わせる変異が同定できた。これらの変異を有する患者と変異の同定されなかった患者について臨床経過を比較すると変異陽性群で不整脈イベントなどが有意に多いことが分かった。また、Mayo clinicの変異予測モデルを利用すると変異同定患者の予測が日本人患者でもある程度可能なことが明らかとなった。これらの内容については、国内外の循環器関連学会で発表を行った。
また、本症の臨床病型評価では、当院を中心に高知県下の循環器基幹病院からなる高知県心筋症ネットワークの活動で肥大型心筋症の登録調査を行い、地域在住患者における予後について報告した。生命予後は比較的良好であるが、心不全入院や脳塞栓症による入院などを含めると肥大型心筋症関連の心血管イベントは5年間で20％に発生していることが明らかとなり、本症患者の定期的なフォローアップの重要性を認識することとなった。本内容を英文医学雑誌に報告した。また、肥大型心筋症の臨床病型を元にした突然死の危険因子の国際的なvalidation studyにも参加し、現在のヨーロッパ心臓学会ガイドラインに記載されている突然死予測モデルがおおよそ有用であることを確認した。本内容については共著者として英文医学雑誌に報告している。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肥大型心筋症の病因遺伝子解析と臨床病型評価が順調に行えており、各成果について医学雑誌や学会発表でも報告できているため。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画通りに、(1)肥大型心筋症病因遺伝子変異の同定、(2)臨床病型の評価、特に血液マーカーや心エコー検査などを用いて縦断的な視点で病態との関連を明らかにしていく。平成30年度では病因遺伝子変異解析は、候補遺伝子アプローチを用いて新規遺伝子
の解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度の共同研究者の学会出張が少なかったため予定していた助成金を本年度に使用することとしたため。

研究成果

• [雑誌論文] Short- and Long-Term Outcomes of Patients With Hypertrophic Cardiomyopathy After Noncardiac Surgery: A Single-Center Retrospective Study. (2019)
  • 著者名/発表者名: Yatabe T, Kubo T, Kitaoka H, Yokoyama M.
  • 雑誌名: J Cardiothorac Vasc Anesth. 巻: 33 ページ: 109-114
  • DOI: 10.1053/j.jvca.2018.03.004.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Patients' Characteristics and Clinical Course of Hypertrophic Cardiomyopathy in a Regional Japanese Cohort - Results From Kochi RYOMA Study. (2018)
  • 著者名/発表者名: Kubo T, Hirota T, Baba Y, Ochi Y, Takahashi A, Yamasaki N, Hamashige N, Yamamoto K, Kondo F, Bando K, Yamada E, Furuno T, Yabe T, Doi YL, Kitaoka H.
  • 雑誌名: Circ J 巻: 82 ページ: 824-830
  • DOI: 10.1253/circj.CJ-17-0845.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] International External Validation Study of the 2014 European Society of Cardiology Guidelines on Sudden Cardiac Death Prevention in Hypertrophic Cardiomyopathy (EVIDENCE-HCM). (2018)
  • 著者名/発表者名: O'Mahony C, Jichi F, Ommen SR, Christiaans I, Cecchi F, Olivotto I, Kitaoka H, Gotsman I, Carr-White G, Mogensen J, Antoniades L, Mohiddin SA, Maurer MS, Tang HC, Geske JB, Siontis KC, Mahmoud KD, Vermeer A, Wilde A, Favalli V, Guttmann OP, Gallego-Delgado M, Dominguez F, Tanini I, Kubo T, Elliott PM.
  • 雑誌名: Circulation 巻: 137 ページ: 1015-1023
  • DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.030437.
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Imaging of Left Ventricular Hypertrophy: a Practical Utility for Differential Diagnosis and Assessment of Disease Severity. (2017)
  • 著者名/発表者名: Kubo T, Kitaoka H.
  • 雑誌名: Curr Cardiol Rep 巻: 19 ページ: 65
  • DOI: 10.1007/s11886-017-0875-5.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Genotype and Phenotype of Hypertrophic Cardiomyopathy (2018)
  • 著者名/発表者名: Toru Kubo
  • 学会等名: ACC18, 67th Annual Scientific Session & Expo
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Management of Hypertrophic Cardiomyopathy in Lifelong Cardiology (2018)
  • 著者名/発表者名: 久保亨
  • 学会等名: The 82st Annual Scientific Meeting of The Japanese Circulation Society
  • 招待講演
• [学会発表] Genetic Basis and Clinical Significance of Hypertrophic Cardiomyopathy (2018)
  • 著者名/発表者名: Toru Kubo
  • 学会等名: The 82st Annual Scientific Meeting of The Japanese Circulation Society
• [学会発表] An elevated serum concentration of high-sensitivity cardiac troponin T predicts progression into end-stage phase of hypertrophic cardiomyopathy (2017)
  • 著者名/発表者名: Toru Kubo
  • 学会等名: 2017 AHA Scientific Sessions
  • 国際学会
• [学会発表] 地域在住肥大型心筋症患者の突然死関連因子の同定高知県心筋症ネットワーク ～Kochi RYOMA Study～ (2017)
  • 著者名/発表者名: 久保亨
  • 学会等名: 第65回日本心臓病学会学術集会