研究実績の概要 |
肥大型心筋症の病因遺伝子変異評価として、これまで通りサルコメア蛋白遺伝子を中心に遺伝子解析を継続した。200名を超える本症患者を対象に、サンガー法にてダイレクトシークエンスを施行し、6つのサルコメア蛋白遺伝子(MYH7, MYBPC3, TNNT2, TNNI3, TPM1, ACTC)の解析を行った。約3割に病因と判定できる変異が同定され、海外のこれまでの報告とほぼ一致している結果であった。さらに、遺伝子型と表現型の関連性について検討したところ、病因変異同定群は非同定群と比較して、肥大型心筋症関連イベント、特に突然死相当イベントが有意に多く発生していることが判明し、遺伝情報を臨床応用するための新たな知見が得られた。さらに、本症患者のうち、どのような臨床像の患者により高率に変異が同定されるかに関して、海外で提唱されたモデルを使用して日本人患者でも同様の結果が得られることを明らかにした。また、本邦に多い心尖部肥大型心筋症とその亜型についても遺伝子解析を実施し、臨床病型の違いによる病因性の差異について検討している。 また、肥大型心筋症の臨床病型評価では、当院を中心に高知県下の循環器基幹病院からなる高知県心筋症ネットワークの活動で肥大型心筋症の登録調査を行い、地域在住患者における予後について報告している。2020年度は突然死のリスク因子の同定や新規心房細動発症の予後におけるインパクトについて検討し発表した。 また、肥大型心筋症のなかでも予後の極めて不良な拡張相肥大型心筋症に移行する例に注目し、心筋傷害マーカーである高感度心筋トロポニンT値が独立した関連因子であることを報告し、本病態形成に関する新たな知見を得た。 これらの結果は英文医学雑誌や国内外での学会にて発表を行っている。
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