研究実績の概要 |
近年の基礎・臨床研究によって、心臓迷走神経刺激による心不全予後改善効果が明らかとなり、心不全病態における副交感神経活動の重要性とその意義、および作用機序の解明が求められている。本研究では「心不全病態における自律神経均衡の破綻が予後不良の主因である」という仮説のもと、その自律神経均衡を標的とした新規治療法の開発と予防対策の確立を到達目標に掲げ、自律神経活動を基軸とした心不全病態の包括的理解と、破綻した自律神経均衡を積極的に是正することによる心不全病態の改善を目指す。 上記仮説を検証するための動物モデルとして以下の3実験群を作製する。 ・正常マウス(wild type, WT) ・心臓迷走神経切除による心臓特異的コリン作動系非働化マウス(vagotomized mouse, VM) ・心臓迷走神経電気刺激による心臓特異的コリン作動系賦活化マウス(vagal nerve stimulated mouse, VNSM) VM作製直後の安静時心拍数の増加は再現性に乏しい上に、VMにおける心筋梗塞(MI)モデル作製後の心不全病態に大きな差は認められなかったため、検証モデルの再考が必要であった。そこで、研究計画に従って、アセチルコリン受容体阻害剤(Atropine)投与によるコリン作動系非働化マウスとアセチルコリン分解酵素阻害剤(Donepezil)投与によるコリン作動系賦活化マウスを作成した。現在、各実験群において心筋梗塞モデルを作製し、心不全の病態評価を行っている。
|