研究課題/領域番号 |
16K09442
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大谷 規彰 九州大学, 医学研究院, 講師 (60380408)
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研究分担者 |
肥後 太基 九州大学, 医学研究院, 助教 (10457426)
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90380625)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アントラサイクリン / トラスツズマブ / 心毒性 / 心機能障害 / 心機能回復 / 心不全治療 |
研究実績の概要 |
がん領域と循環器領域で連携し、基礎、臨床、疫学研究に取り組むOnco-cardiology(腫瘍心臓病学)という新たな学際領域は、本邦では欧米に比べ後塵を拝しており、抗がん剤心毒性に対する実態調査を行った。 1. アントラサイクリン系抗がん剤心毒性の実態と危険因子の同定、不可逆性の検討 2001年から2015年までに九州大学病院でアントラサイクリン系抗がん剤治療を受けたがん患者350人(50 ± 16 歳、女性161)を後方視的に解析し、観察期間中央値3.5年で52症例(14.9%)が心毒性を発症していることが判明した。多変量解析では、心臓病の既往(オッズ比6.00)および投与前の左室収縮能の低下(オッズ比1.09)が心毒性発症の危険因子であることが判明した。観察期間中央値3.5年で33症例(67.3%)の心機能回復が観察されたが、多変量解析では心不全治療薬導入が心機能回復の独立した予測因子であった(Clinical Research in Cardiology. 2018)。 2. トラスツズマブ心毒性の実態と危険因子の同定 2006年から2015年までに九州大学病院でトラスツズマブの投与を受けた乳がん患者160人(56 ± 12 歳)を後方視的に解析し、観察期間中央値3.5年で33症例(20.6%)が心毒性を発症していることが判明した。心毒性発症時にはトラスツズマブ投与前と比較し、左室駆出率が平均で19.7%低下していたが、多変量解析では、トラスツズマブ投与前の左室駆出率の低値(オッズ比1.15)が、心毒性発症の独立した危険因子であった。26症例(81.3%)で心機能回復が観察されたが、多変量解析では心不全治療薬導入が心機能回復の独立した予測因子であった(Clinical Research in Cardiology. 2019)。
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