研究課題
ヘリコバクター・ピロリ菌感染の中でもCagA抗体陽性のピロリ菌が胃癌、急性心筋梗塞の発症に関与しており、本邦ではCagA陽性ピロリ菌の割合が高い。このため、平成30年度はピロリ菌感染の中でも、CagAタンパク質と動脈硬化発症、進展との関係を明らかにするため、CagA抗体染色によるCagAタンパク質分布に着目した。ピロリ菌感染は血液での抗体測定により判断しているが、ヒト組織での染色等による確認はこれまで報告がない。このため、ヒト血管組織、特に動脈硬化病変組織でのヘリコバクター・ピロリ菌産生CagAタンパク質の分布を明らかにし、血管イベントとの直接的な関連を検討した。結果は、CagA陽性患者からの胃粘膜組織を免疫染色したところ、陽性所見が得られ、ポジティブコントロールとした。次に、動脈硬化の一つである腹部大動脈瘤の人工血管置換術時に切除された組織をサンプルとしてCagA陽性の患者と陰性の患者で免疫染色を行った。大動脈の内膜組織にCagA陽性患者では染色され、陰性の患者では染色されなかった。初めてヒト動脈硬化血管におけるCagA抗体陽性が示され、CagAタンパク質と動脈硬化血管との関連性が示唆された。これまで、急性心筋梗塞ではヘリコバクター・ピロリ菌感染+インターロイキン1遺伝子多型保有者が有意に高値であり、喫煙の因子が加わることでST上昇型急性心筋梗塞の頻度が高値であることを示してきたが、平成30年度の実験において、ピロリ菌産生CagAタンパク質が動脈硬化性血管の発生と関連している可能性があることが示された。以上から、遺伝・環境要因からみた動脈硬化性血管疾患の発症・進展・再発リスクを明らかにした。
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