研究課題
近年、急性心筋梗塞はプラークの形成を中心的とする「急性冠症候群(ACS)」の枠組みで捉えられている。プラークとは、酸化したコレステロールなどが沈着してできた血管内の隆起で、なかでも「不安定な」プラークが破裂することにより、血栓が形成され、冠動脈の内腔が塞がれて不安定狭心症、急性心筋梗塞が発症する。こうした病態の理解に伴い、急性心筋梗塞の治療も大きく変遷を遂げてきている。急性心筋梗塞の治療としては、薬物療法もあるが、主流は再灌流療法である。再灌流療法は、血栓によって血流が途絶えたために生じる心筋の壊死を、なるべく小範囲にとどめることが目的であり、「来院から再灌流までに要する時間」が鍵となる。急性心筋梗塞に関してはST上昇型の心筋梗塞がその心筋梗塞の梗塞サイズの測定がしやすい。大学にはST上昇型心筋梗塞の症例が多くないので協力関連病院を増やすことにした。また、そのデータ管理に関しては大阪市立大学のデータ情報センターに集約させて、インターネットを用いてデータを集約するようにした。さらに、我々は、急性冠症候群において、OCTによりプラーク破裂は約40%であること確認できた。また、心臓MRIでは、心機能、心臓の形態が正確に評価でき、ガドミニウムの造影により心筋組織の線維化を正確に判定している。エクソソームは細胞が分泌する50-100 nmの膜小胞であり,核酸やタンパク質を内包する。エクソソームはドナー細胞から分泌されレシピエント細胞の機能変化を引き起こす。基礎研究で低酸素状態の脂肪細胞が分泌するエクソソームは他の脂肪細胞の脂肪滴蓄積を促進することを発見した。現在、急性冠症候群特にST上昇型急性心筋梗塞におけるエクソソームの関与の解明を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
近年、急性心筋梗塞はプラークの形成を中心的とする「急性冠症候群(ACS)」の枠組みで捉えられている。プラークとは、酸化したコレステロールなどが沈着してできた血管内の隆起で、なかでも「不安定な」プラークが破裂することにより、血栓が形成され、冠動脈の内腔が塞がれて不安定狭心症、急性心筋梗塞が発症する。こうした病態の理解に伴い、急性心筋梗塞の治療も大きく変遷を遂げてきている。この急性冠症候群の大阪市大病院における実態を把握するために電子カルテが導入された2007年から現在までの循環器内科に入院したデータを調べた。電子カルテを検索して、不安定狭心症、急性心筋梗塞患者の血液検査、エコーデータおよびカテデータをすべて得ることができた。さらに、急性冠症候群患者のデータを増やすために、協力病院を増やした。具体的には、大阪市立総合医療センター、石切生喜病院、ベルランド総合病院、西宮渡辺病院、東住吉森本病院、守口生野病院、ツカザキ病院である。心臓MRIにより心臓形態、心機能、心筋性状さらにT2強調画像で虚血部位を、遅延造影MRIで梗塞部位を求めることができ、虚血部においてどれだけ梗塞になったかという心筋救済率の定量評価も行うことができた。心筋救済率 とは梗塞後7日目MRIによりT2強調画像で虚血領域を測定して、ガドミニウムの取り込みで梗塞領域を評価することである。各病院にてMRI装置の機種が違う。そのため、どのような機種でも各施設間において評価に違いがでないように、にソフトを購入した。これにより、MRIの機種が違っても互換性があるように整備した。また、そのMRIのデータの解析はバイアスが入らないように3人の心臓MRIの放射線医師の専門科にお願いして解析してもらうようにした。また、エクソソームに含まれるマイクロRNAを患者さんの採血から取り出せるようにした。
OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層撮影)とは、近赤外線と光干渉計を用いて微小な組織を観察する高画質の断層画像技術である。このたびは、画像診断カテーテルを用いて血管内の断層撮影を行った。そしてその高い解像度により、65µm未満の薄い線維性被膜や線維性被膜下の大きな脂質コアを観察することができ、急性冠症候群の発症原因となりえる不安定プラーク検出の可能性であった。しかし、この画像解析に関してもバイアスが入らないように、今回の研究に参加しない、循環器専門科3名にデータ解析をしてもらい、冠動脈プラークの客観的評価をしてもらう予定である。急性冠症候群患者のデータを増やすために、協力病院を増やした。そして大阪市立大学のデータ情報センターを利用することにしたが、そのデータの個人情報が安全に運用されるように個人情報は匿名化して、データ集積をするようにする。心臓MRIにより心臓形態、心機能、心筋性状さらにT2強調画像で虚血部位を、遅延造影MRIで梗塞部位を求めることができ、虚血部においてどれだけ梗塞になったかという心筋救済率の定量評価も行うことができた。しかし、現在用いてる造影剤の量は本当に適正であるかどうかも確認する予定である。細胞間コミュニケーションの重要な役割を担っているエクソソームに焦点を当てた解析を行う。血中からエクソソームを抽出して、そこに含まれるmicroRNAを網羅的に解析し、病態に関与するmicroRNAを同定する。血清中エクソソームの抽出・精製法は確立できており、エクソソームに含まれるマイクロRNAの発現解析を行う。抽出したエクソソーム中に含まれるマイクロRNA発現を調べ、病態の進展に伴う発現変化を経時的に、かつ、網羅的に解析する。
心臓MRIやOCTによる急性冠症候群、特にST上昇型急性心筋梗塞患者が予定どおりに症例が集まっておらず、初年度予定したより少なく、また、同時にエクソソームの解析も少ないため、予定していたより使用額が少なかった。
協力関連病院を増やして、エントリーできる症例を増やして、そのためには研究費がいると考えられる。そのために、使用する予定である。
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