研究実績の概要 |
本研究は, ①持続性AF症例の不整脈基質と考えられている心外膜脂肪 (EAT)と心房内低電位領域 (LVZ) の心房内分布特性の解析, ②術中にリアルタイム周波数解析を施行し, AFのドライバーと考えられるhigh-DF sitesを術中に同定し通電を試みた. ①の追加解析として、大動脈冠尖部, 下行大動脈, 椎骨等の直接左心房に接する心臓外構造物 (CoA) はAFの維持や左房の局所電気的リモデ リングに関与する基質として報告され、CoA領域とEATおよびhigh-DF sitesとの空間的・電気生理学的特性の検討を行った. 60例の持続性AF症例で, 38例(63%) に有意な(左房内総面積の10%以上)LVZを認めた. 38例中, EATは左房天蓋部(35/38:92%), 前壁(30/38:79%), 後壁(17/38:45%)に高頻度に分布していた. 前壁(27/30 90%)および後壁(13/17:76%)のEATはCoAと近接し, 他のEAT領域よりその容量 (2.1 vs. 8.8ml, P<0.01) および心房電位波高 (0.69 vs. 2.42mV, P<0.01) は有意に低値を呈した. さらに前後壁のCoAと隣接するEATはhigh-DF sites (6.6±0.5 Hz) を有していた. 通電は全例にまず肺静脈隔離術を施行, その後CoA領域を含むLVZへ追加焼灼を施行した. 追加焼灼中に26%(10例) にAFの停止を認め, 非停止症例では左房全体の興奮を反映する冠静脈洞電位周波数の有意な減少(6.0 vs. 5.4Hz , P<0.001)を認めた. 72時間ホルター解析では, 12カ月で37%(14例) に再発を確認した. 以上から, CoA領域にはhigh-DF sites を有するEATが高頻度に分布し, 持続性AFの維持に関与する電気生理学的特性を有する可能性が示唆された. この数年に持続性AF症例に対するアブレーション治療に大きな変遷があり, 通常のカテーテルによる肺静脈前庭部以外の追加焼灼の有効性が否定されてきた. 患者不利益を排除するため, 通電方法はバルーンテクノロジーを用いた治療法へと切り替え, 症例を重ねて検討していく必要があると考える.
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