研究実績の概要 |
本年度は昨年度の解析の測定ポイントを増やし、心筋傷害後に惹起される炎症性物質の発現がどのような動きを見せるのか、また虚血部位によってその発現がどのように異なるのかを測定した。マウスの心筋梗塞を作成し,梗塞後1,2,3,5,7および14日目に心臓を摘出した。心筋梗塞中心部(MI)、周囲巣(PMI)および遠隔部位(RM)をそれぞれ切り出しmRNAを抽出、RT-PCR法にて炎症性サイトカインの発現をMI群と非手術群 (CTL) と比較検討した。各群における遺伝子発現の最大(小)値(-fold, CTLとの比較発現量)とその時間ポイント(日)とはそれぞれ、TNFα: MI=14.5, PMI=9.3, RM=1.9 (d1), IL-1β: MI=206.1, PMI=127.0, RM=7.9, IL-2: MI= 25.1, PMI=14.7, RM=4.7 (d1), IL-6: MI= 315.4 , PMI=133.7, RM=2.9, IL-10: MI= 19.4, PMI=12.9, RM=2.2 (d7)と、TNFα, IL-1β, IL-6はMI後1日目でピークを迎え、その後急激に低下したのに対し、IL-2は上昇が遷延した。IL-10は5日目から上昇しその後も上昇が続いた。vWFは5日目から急に上昇し、14日目にも増加傾向であった。一方でVEGFおよびVEGF-R2はこの観察期間では有意な上昇を示さなかった。ANG1は軽度上昇を認め、ANG2に14日目も20.1と大きな発現増加を認めた。これらのことから、心筋梗塞後の組織炎症は1-2日目であり、その後は漸減するが、その程度はサイトカインによって異なること、血管新生は5日目から継続して起こり、また抗炎症性サイトカインの発現増加も見られたことから、このタイミングでの細胞投与が最も有効であると考えられた。
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