研究実績の概要 |
虚血性心疾患において、各種炎症マーカーと組織修復に関する因子をそれぞれ部位別に経時的に測定、炎症と組織修復がどのように関連しているのかを解明し、組織損傷および修復の最適な条件を示すことを目的とした。 マウスの冠動脈結紮モデルを作成、梗塞中心部、周囲巣および遠隔部位にて、炎症性サイトカイン、組織修復関連因子の発現量をそれぞれ急性期(day1)から慢性(day14)にかけて測定した。炎症性サイトカインの発現はすべて梗塞中心で最も高く、周囲巣、遠隔と離れるにつれてその発現は低下していた。ピークポイントはTNFα、IL-1β、IL-6、IL-8はd1に上昇しその後急速に低下したのに対し、IL-2 は二峰性のピークであり、IL-10はd5から上昇した。一方でc-kitはd1で上昇後、d7以降にさらに上昇した。興味深いことに、c-Kitは周囲巣や遠隔部でもほぼ同等の上昇を示した。ISL1はd3以降から上昇を始め、d14にかけて上昇傾向であった。一方でTBXファミリーはd5にピークがありその後は急減した。GATA4も同様の発現傾向を示した。NKx2.5の発現は全期間を通してほとんど変化が見られなかった。 血管マーカーであるvWFはd5から大きく上昇し、d14にも増加傾向であった。PECAM-1も同様にd5でピークであった。VEGF/VEGF-R2はd5で軽度上昇がみられた。心臓由来ホルモンであるBNPはd1でピーク、ANPはd7でピークとなっていた。またANP,BNPは心室内では梗塞中心部よりも周囲部で発現が多く見られた。これらのことから、心筋梗塞後の組織炎症は1-2日目がピークでありその後は収束する一方、継続して炎症を引き起こす機序もあること、血管新生は5日目から起こり、同時期に抗炎症性サイトカインの発現増加も見られたことから、このタイミングでの治療介入が最も有効であると考えられた。
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