研究実績の概要 |
交感神経でのシナプス前膜から放出された過剰なノルアドレナリンをα2受容体を介して受け取るオートレセプター作用を解明するために、以前、我々は脊髄中間外側核(IML)にある交感神経節前ニューロン(SPN)のホールセルパッチクランプ法による細胞内記録を報告した。ノルアドレナリンで脱分極しシナプス後電位(EPSPやIPSP)は増加・増大し、dexmedetomidine hydrochloride (Dxm) (α2-adrenergic receptor agonist)で抑制された。しかしいくつかのfiring-SPNでは、ノルアドレナリンは抑制的に作用し、その抑制作用はDxmによって変化しなかった。(Hypertention Res. 41(7), 499-505, 2018) その一方で、α2受容体の反応の程度は個体差が大きかった。そこで、もっと大きな交感神経システムであれば反応がより大きくみられ個体差も小さくなると予想し、延髄-交感神経幹摘出標本を用いて同様な実験を施行したが、スライス標本に比べより大きい反応はみられなかった。さらに脊髄-交感神経幹摘出標本を用い、ノルアドレナリンやDxm以外のα2受容体に作用すると考えられる薬剤(Phenylephrine、Atipamezole、Cortictropin releasing factor)に対する反応も観察したが明らかな違いは認めなかった。 以上の結果を踏まえて、今後はα2受容体でのオートレセプター作用に関連性が考えられる延髄アドレナリン産生C1ニューロンに注目し、C1ニューロン‐SPNにおけるα2受容体を介したグルタミン酸放出調節の電気生理学的解析を進める予定である。
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