本研究はiPS細胞の冠動脈内注入という低侵襲な方法による心筋再生療法の効果をマウスiPS細胞とマウス心筋梗塞モデルを用いて、すでにそれによる心機能改善効果が証明されているマウス心筋幹細胞の冠動脈内注入による効果と比較し効果を検証することを目的とした研究である。具体的にはマウス心筋梗塞モデルを90分間の冠動脈虚血再灌流モデルにて作成し、心筋梗塞作成48時間後にマウスiPS細胞の冠動脈内注入を行い、心筋梗塞作成前、心筋梗塞作成後冠動脈内注入前、冠動脈内注入35日後にそれぞれ心エコー検査を行い心機能改善効果を検証する実験計画とした。また実験の第一段階としてそれぞれ異なる細胞数のマウスiPS細胞を用いて冠動脈内注入を行い、それぞれの心機能改善効果を比較し至適冠動脈内注入細胞数を決定し、第二段階として至適細胞数のiPS細胞を用いた冠動脈内注入と、100万個のマウス心筋幹細胞を用いた冠動脈内注入の心機能改善効果を比較する研究計画とした。研究計画に従い研究を進めたが、マウスiPS細胞の冠動脈内注入に関して技術的な問題が生じ、使用する動物種をラットに変更する必要性が生じ、研究計画の一部を変更せざるを得なかった。ラットのiPS細胞については現在広く使用できるものが存在しないため、免疫不全モデルのラットを使用し、ラット心筋梗塞モデルにマウスiPS細胞の冠動脈内注入を行う実験モデルへと変更した。しかしながら、免疫不全モデルを用いたラット心筋梗塞モデルの作成は通常の心筋梗塞モデル作成より困難であり、残念ながら研究期間内に実験計画を終了することができなかった。現在引き続き研究を進めており、今後研究成果に関して報告する方針である。
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