研究課題
本研究の目的は非侵襲的血液バイオマーカーとして心不全や心筋症の診断および治療効果判定に有用な血清microRNA (miRNA)を同定することである。私たちは2次性心筋症の代表的疾患である心臓サルコイドーシスの血液診断バイオマーカーとして2種類のmiRNAの同定に世界で初めて成功し英文誌 (J Cardiol. 2018;72(6):452-457) にて発表した。この論文に対するEditorialでは心サルコイドーシスの診断に革命を来す大きな第一歩となる成果であると高い評価を得た。また、最近注目されている心不全患者への運動療法の分子生物学的メカニズムの確立へ向けて、運動療法前後で発現が変化する血清miRNAのスクリーニングを行い、複数の候補miRNAを絞ることに成功し、米国循環器学会 (AHA 2018) にて発表した。高齢社会の日本では特に増加の一途をたどる高齢患者は運動が困難な症例が多い。従って、運動療法前後で発現が変化する血液中miRNAを同定して、そのmiRNAのターゲットとなるタンパクを解明することで、心不全における運動療法の分子機序を解明するとともに、運動療法と同じ効果を有する新薬開発に必要な治療ターゲット探索の第一歩となる研究成果であると考える。運動療法前後の体組成分析装置による測定では全例で筋肉量の軽度増加を認めた。また、絞り込んだ複数のmiRNAについて、20例の運動療法を実施した心不全患者において、運動療法前後での血液を採取し、血清miRNAを定量的PCRにて定量評価した。その結果、スクリーニング検査では運動療法前後で発現が変化していたmiRNAが定量的PCRでは一種類も変化していないことが明らかとなった。心不全の基礎疾患や年齢等の患者の背景因子を層別化して、運動療法前後でのmiRNA発現に差がないか、さらに解析を今後進める予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Journal of Cardiology
巻: 72 ページ: 452~457
10.1016/j.jjcc.2018.06.004
BMC Cardiovascular Disorders
巻: 18 ページ: 159-159
10.1186/s12872-018-0897-y
Critical Care
巻: 22 ページ: 197-197
10.1186/s13054-018-2120-z