本研究の目的は、「心不全および心腎機能障害進展におけるバゾプレッシン系と交感神経系のクロストークを心腎脳ネットワークの観点より検討し、その修飾による新規治療の可能性を探る」ことである。【課題A】心不全におけるV1a受容体、V2受容体と交感神経系の相互連関作用の検討、【課題B】敗血症ショックモデルにおけるバゾプレッシン系と交感神経系の役割の検討する。【課題C】バゾプレッシン系―交感神経系におけるmiRNA制御と心不全・心腎機能障害との関わりから成り、心不全、心腎機能障害の新しい病態生理の解明そして予防・治療法への応用を目指している。 本年度は、課題Aおよび課題Bにおける、バゾプレッシン系と交感神経系のクロストークの基礎となるデータを検討した。課題Aでは、心腎障害モデルラットにて腎交感神経切除術による腎臓交感神経の持続的な遮断により、腎臓局所および中枢性の交感神経活性抑制化を惹起し、心腎両組織にて局所バゾプレッシン系の活性抑制を引き起こすことが明らかになった。また課題Bでは、敗血症性モデルマウスでは、心局所の交感神経系およびバゾプレッシン系の活性化がみられること、バゾプレッシン受容体ノックアウトマウスでは良好な心および生命予後を示すことが明らかになった。ただし腎臓局所におけるバゾプレッシン系の活性化はみられなかった。また、同モデルにおいて腎交感神経切除ないしはベータ遮断薬による予後改善の有無を検討し、両者のダイレクトなクロストークを証明する実験を開始しているが、本年度中には明らかな結果は得られなかった。
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