研究課題/領域番号 |
16K09468
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
甲斐 久史 久留米大学, 医学部, 教授 (60281531)
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研究分担者 |
姉川 敬裕 久留米大学, 医学部, 助教 (00511833)
福田 賢治 久留米大学, 医学部, 講師 (10624512)
岩元 美子 久留米大学, 医学部, 助教 (30597422)
打和 大幹 久留米大学, 医学部, 助教 (30624506)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 冠動脈疾患 / 抗血小板薬 / 抗凝固薬 / 抗血栓療法 / 危険因子 / 頭蓋内出血 / 頭部MRI |
研究実績の概要 |
本研究では、心血管疾患における抗血栓薬2剤併用療法、抗血小板薬+抗凝固併用療法が、頭蓋内出血のサロゲートマーカー頭部MRI T2*画像による頭蓋内微小出血(CMBs)を増加させるか、さらに頭蓋内出血を増加させるかを前向き登録研究により検討する。古典的動脈硬化危険因子に加え、尿中アルブミンや血中AGEといった新しいバイオマーカー、内皮機能、脈波速度、中心血圧など新しいサロゲートマーカーとCMBs発症との関連を評価する。これによりCMBsが心血管疾患における抗血栓療法の頭蓋内出血発症の個別的予知因子となるか、頭蓋内出血リスク層別化が可能であるかを明らかにする。 今年度の研究実績: 久留米大学医療センター循環器内科、久留米大学心臓・血管内科の心血管疾患患者のうち、アスピリン、チエノピリジン系薬剤のいずれかの単剤療法症例(SAPT群)、DES施行例でアスピリン+チエノピリジン系薬剤による新規DAPT症例(DAPT群)、ワルファリンまたはDOACのいずれかによる単剤療法症例(SOAC群)、SAPT+ワルファリンまたはSAPT+DOACによる2剤併用症例(DT群)、DES施行例で新規DAPT+ワルファリン併用症例(TT群)を登録中である。 登録初期の症例で12か月以上のフォローが可能であったDAPT群14例についてpreliminaryな検討したところ、登録時にCMBsが認められたものは2例(14%)であった。12か月後の再検時に新規CMBsは2例(14%)に出現した。登録時にCMBsを認めた2例に変化はなかった。CMBs陽性であった4例と陰性であった10例を比較検討したところ、CMBs陽性群において冠動脈罹患枝数が有意に多く、SYTAXスコアも高値であった。また登録時血圧は両群で同等であったがCMBs陽性群では8か月後の収縮期血圧が高値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、抗血栓薬服用中の心血管疾患患者を登録中である。概ね順調に登録は進んでいるが、抗血小板薬単剤SAPT群と抗血小板薬2剤併用DAPT群と比較して、SAPT+ワルファリン併用のDT群およびDAPT+ワルファリン併用TT群の症例数が少ない傾向が見られる。動脈硬化の生理学的指標として当初FMDを用いる予定であったが、当院検査部がFMD検査を廃止し、エンドパッド検査に切り替えた。しかし、その切替え時期が遅れたため登録初期の症例でエンドパッドのデータが得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初期症例のpreliminaryな検討の結果、8か月間の観察期間でにCMBs発症数は想定よりも低値であった。したがって、統計学的パワーのある検討を行うためには登録症例数を増やす必要があると考えられた。そこで、平成30年度も症例登録をすすめる。さらに登録時の末梢血マーカーの測定および12か月の観察期間終了症例のフォローアップ検査(頭部MRI、生理学的検査、末梢血マーカー)を施行する。 また、実臨床において抗凝固薬としてワルファリンよりもDOACが用いられている症例が急増している。従って当初抗凝固薬としてワルファリンに限っていたDT群およびTT群の対象をそれぞれワルファリンまたはDOACに対象拡大することを考えている。 ただし、DT群およびTT群の症例数が少なく症例群間での登録数のバラツキが顕著になってくる可能性がある。その際には、統計学的パワーを確保するために、可能な限り最も症例数が少ない群が目標症例数に達するまで登録をするめることを考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までの登録症例数が予定より若干少なかった分、登録時・12か月観察期間終了後の検査費用が小さくなったため次年度使用額が生じた。今後、登録・観察期間終了の症例が増えてくるため翌年度分として請求した助成金とあわせて検査費用等として使用する予定である。
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