本研究を開始するにあたり、当施設の倫理委員会に研究計画書を申請していたが、委員会より、まず後ろ向きでの研究を行うことを指示されました。まず冠攣縮性狭心症を合併する薬剤溶出性ステントを留置された患者を対象に、後ろ向きにデータを解析し、冠攣縮性狭心症を合併する患者は、合併しない患者に比べステント留置後の長期予後が不良であることが判明しました。以上から、血管機能異常を有する症例はステント留置後の予後が不良であり、これまで報告されているようにステント留置後に増悪してしまう血管機能異常を少しでも抑えることは重要であると考えられます。また、冠攣縮性狭心症患者が器質的狭窄を合併し、ステント留置1年後のフォローアップで再び冠攣縮を誘発した患者を対象に、血管機能異常の変化を解析し、またステントの種類別にアセチルコリンに対する血管反応の違いがあるかを解析し、現在論文執筆中です。またステントの薬剤の塗布に必要なポリマーが炎症を惹起し血管機能異常を引き起こしやすくする可能性があり、当初目的とした生体吸収性ポリマーステントが非吸収性ポリマーステントと比較し、ステント留置後慢性期のアセチルコリンに対する血管機能異常が軽減されることを仮説とした前向きの無作為割り付け試験について、倫理委員会とプロトコールについて審議を重ね、最終的に委員会より承認を得らえ、現在患者登録中であります。薬剤溶出性ステントを留置予定の研究同意患者を無作為に割り付け、ベースラインのアセチルコリンに対する血管機能異常を調べ、生体吸収性ポリマーステントあるいは非吸収性ポリマーステントを留置後の慢性期にアセチルコリンを誘発し、2群の比較を行う予定です。
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