研究実績の概要 |
科学技術が進歩した現代においても、外気温の低下と上昇は、死亡率上昇と関連しており、13か国の分析から、74,225,200 人の死亡のうち7.7%が外気温の変動によると推測されている。冷暖房による室内環境の調整によって、どの程度の死亡を予防できるかを推測し、疾病予防に適切な温度環境を明らかにするためには、室温と疾病頻度の関連を明らかにする必要があるが、先行研究は乏しい。夏の室温の上昇による死亡率上昇の一因として、睡眠障害と夜間血圧上昇が挙げられる。夜間血圧は、日中血圧と比べて強く心血管疾患の死亡率と関連する。自由行動下血圧測定の結果によると、夜間血圧が夏に上昇したとする報告があるが、室温の変動によって夏の夜間血圧がどの程度変動するかは不明である。また夜間血圧の上昇に、室温上昇による睡眠障害が関与する可能性があるが明らかではない。本研究の目的は、春(5-6月)、夏(7-9月)、秋(10-11月)の夜間血圧とアクチグラフによる睡眠の質を測定し、夏の室温上昇と夜間血圧や客観的睡眠の質との関連を明らかにすることである。 平成30年度までに当初予定の900名を上回る965名について、居間および寝室の室温測定や測定日の外気温(最寄りの気象台から入手)の測定を完了した。対象者が記録した入床時刻と離床時刻から、日中平均値および夜間平均値を算出し、自由行動下血圧データ、アクチグラフの測定結果から算出した総睡眠時間、睡眠効率、入眠潜時、中途覚醒時間との関連を分析し、分析結果を関連学会で発表した。また本研究に関連する学術的成果として、複数の関連論文が英文科学雑誌に採択・掲載された。以上のことから研究全体としておおむね順調な進捗であった判断した。
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