研究課題/領域番号 |
16K09480
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
松尾 好記 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (20420755)
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研究分担者 |
久保 隆史 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (30316096)
赤阪 隆史 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70322584)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 / 冠動脈疾患 / 心筋血流予備量比 |
研究実績の概要 |
経カテーテル的大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)は、外科手術リスクの高い重症大動脈弁狭窄症(AS)患者に対する治療法である。TAVIの適応となるAS患者は、高頻度で冠動脈疾患を合併しており、冠動脈疾患は予後不良因子であるだけでなく、TAVI術中の血行動態破綻の要因となる。ASに合併する冠動脈血行再建術の適応や治療時期などの治療方針を決定する上では冠動脈病変の重症度を正確に評価することが重要である。冠動脈造影に基づいた冠動脈狭窄度の解剖学的評価は、心筋虚血の判定に適しておらず、冠循環生理に基づいた心筋虚血の機能的評価が必要である。心筋血流予備量比(Fractional flow reserve: FFR)は冠動脈狭窄存在下の冠循環動態を正確に評価できる機能的評価法である。FFRは弁膜症を有さない患者において冠動脈機能的狭窄度評価法としてゴールドスタンダードであるが、重症ASが冠循環にいかなる影響を及ぼすかは十分解明されておらず、さらにASに合併した冠動脈狭窄の機能的評価法も確立されていない。本研究の目的は、ASに合併した冠動脈狭窄の冠循環生理解明と機能的評価法を確立することである。 H29年3月まで以下に関する臨床研究を推進中である。 1. AS合併冠動脈疾患における冠循環動態:冠動脈に中等度狭窄病変を有する症例に対して、冠動脈造影検査の際に冠動脈病変に対してFFRによる機能的狭窄評価を行った。また、FFRの測定と同時に、瞬時血流予備量比(instantenous wave-free ratio: iFR)での評価を行った。 2.TAVI治療後の冠循環動態の変化:TAVI手術前後でFFR/iFRにより冠動脈機能的狭窄度の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧米でのこれまでの報告(60%)と比較し、当院におけるAS症例の冠動脈疾患合併頻度は低く(15%)、当該年度における、本研究の対象症例は当初の予測よりやや少ないが、おおむね順調に症例登録を推進している。
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今後の研究の推進方策 |
研究を開始し症例を重ねていくにつれ、TAVI治療における冠血流変化は、疾患の重症度によりさまざまであることが明らかとなってきた。冠動脈病変の重症度が異なるAS症例に関しても、包括的な冠血行動態評価が重要であることが示唆されたため、今後は軽度の冠動脈狭窄病変を有する症例に対しても、非侵襲的な経胸壁心エコー図検査を利用し、冠血流予備能(CFR)を測定する。今後さらに症例を集積する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vitro研究に関しては、当初の予定からやや遅れている。In vitro研究に必要である費用は今年度は未使用であったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き症例の登録を行う。予定症例数に達した時点で結果の解析や検討を行う。研究結果は病態の解明や治療方針の決定に影響を与えうるため、国内外の循環器系学会での発表や学術誌での発表を行うことで議論を深めることができる。研究発表のためには旅費、学会参加費が必要である。
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