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2016 年度 実施状況報告書

肺高血圧症罹患細胞により構築した血管モデルを用いた肺高血圧症進展機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K09488
研究機関独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部)

研究代表者

小川 愛子  独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構 岡山医療センター(臨床研究部), 分子病態研究室長 (40572748)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード肺高血圧 / 微小血管モデル / メカノストレス / シグナル伝達
研究実績の概要

肺高血圧症(pulmonary hypertension: PH)は,肺小細動脈の血管内腔が狭小化・閉塞することにより肺動脈圧が上昇し,右心不全に至る難治性疾患である.これまでに複数のPH治療薬が開発されているものの,いまだ予後不良である.肺小細動脈の狭小化・閉塞を引き起こす肺血管リモデリングの本態は,肺動脈平滑筋細胞(PASMC: pulmonary artery smooth muscle cells)の異常増殖と考えられているが,その詳細な発症機構は明らかにされていない.特に,他の血管疾患の進展に重要と考えられている,メカノストレスのPH病態への影響はほとんど検討されていない.そこで本研究では,メカノストレスに着目し,PHの病態進展に重要なPASMCの増殖を制御する分子機構を解明することを目的として,PH症例から単離・培養したPASMCを用いて肺微小血管モデルを作成し,以下の検討を行った.
①PH症例の肺動脈内の血流速を実測し,実際のずり応力を算出し,血管が受けているメカノストレス強度を算出した.この値を,本研究で負荷する至適メカノストレスとした.②ポリジメチルシロキサンを用いた流路を使用した微小血管モデル流路に,PH症例由来PASMCを一層播種した血管モデルを作成した.さらに,PH症例由来PASMCに内皮細胞を積層する2層培養状態の細胞を流路内に組み込んだ,送液可能な血管モデルの作成にも成功した.これらの血管モデルに対して,上記メカノストレスを加え,細胞の形態や増殖能や細胞内シグナルへの影響を観察した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PH症例の肺動脈にかかるずり応力を実測値から計算したところ,これまでに血管疾患で報告されている値より高いことが明らかとなった.この患者実測値に基づいたずり応力を負荷したところ,1層のPASMCだけで構成された血管モデルでは細胞剥離が起こり,血管モデルの維持が困難であった.そこで,コーティング方法などの適切な細胞播種条件を検討するとともに,内皮細胞を組み合わせた2層構造からなる血管モデルを作成したところ,高ずり応力下においても細胞維持が可能であった.本血管モデルの作成方法に関して特許出願を行った.初年度に計画していた成果が得られており,計画は概ね順調に進行していると考えられる.

今後の研究の推進方策

平成29年度は,メカノストレスのターゲット分子の同定を目的として,前年度作成した,PH症例由来PASMCに内皮細胞を積層する2層培養状態の細胞を流路内に組み込んだ血管モデルを用いて以下の検討を行う.
他の血管疾患においてメカノストレス感知機構,細胞増殖亢進機構に関与することが報告されているPDGF-B,TGF-β,Akt,ERKを中心にメカノストレスの影響を解析する.即ち,高/低ずり応力を加えた細胞を用いて,上記の細胞内シグナル伝達系の分子の発現量や局在,活性化状態を免疫染色やPCR,ウェスタンブロットなどを用いて評価するとともに,細胞の形態変化,表面マーカーの発現,細胞増殖能などを検討し,小肺動脈内のずり応力に対する応答機構を解明する.
さらに,網羅的な遺伝子発現解析を実施し,新規の関連分子を検索する.即ち,静置細胞と送液負荷細胞などからそれぞれmRNAを抽出し,GeneChip解析を行い各種の遺伝子の発現量を測定する.統計解析手法を用いて各種の細胞間の遺伝子発現量の比較を行い,PH病態の進展やメカノストレス応答を制御するシグナルパスウェイと関連分子を同定する.

備考

産業財産権の発明者には,本研究代表者の戸籍名が記載されている.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 4件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Survival of Japanese Patients with Idiopathic/Heritable Pulmonary Arterial Hypertension2017

    • 著者名/発表者名
      Ogawa A, Satoh T, Tamura Y, Fukuda K, Matsubara H.
    • 雑誌名

      The American Journal of Cardiology

      巻: 119 ページ: 1479-84

    • DOI

      10.1016/j.amjcard.2017.01.015.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluidic Culture and Analysis of Pulmonary Artery Smooth Muscle Cells for the Study of Pulmonary Hypertension2016

    • 著者名/発表者名
      Sato K, Nakajima M, Tokuda S, Ogawa A.
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 32 ページ: 1217-21

    • DOI

      10.2116/analsci.32.1217

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Novel angiographic classification of each vascular lesion in chronic thromboembolic pulmonary hypertension based on selective angiogram and results of balloon pulmonary angioplasty2016

    • 著者名/発表者名
      Kawakami T, Ogawa A, Miyaji K, Mizoguchi H, Shimokawahara H, Naito T, Oka T, Yunoki K, Munemasa M, Matsubara H.
    • 雑誌名

      Circulation: Cardiovascular Interventions

      巻: 9 ページ: e003318

    • DOI

      10.1161/CIRCINTERVENTIONS.115.003318

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spontaneous Enlargement of Pulmonary Artery after Successful Balloon Pulmonary Angioplasty in a Patient with Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension2016

    • 著者名/発表者名
      Nagayoshi S, Ogawa A, Matsubara H.
    • 雑誌名

      EuroIntervention

      巻: 12 ページ: e1435

    • DOI

      10.4244/EIJ-D-15-00484

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Rapid and high-dose titration of epoprostenol improves pulmonary hemodynamics and clinical outcomes in patients with idiopathic and heritable pulmonary arterial hypertension2016

    • 著者名/発表者名
      Tokunaga N, Ogawa A, Ito H, Matsubara H.
    • 雑誌名

      Journal of Cardiology

      巻: 68 ページ: 542-7

    • DOI

      10.1016/j.jjcc.2015.11.012.

    • 査読あり
  • [学会発表] 肺高血圧症症例由来の肺血管細胞を用いた血管モデルの構築2017

    • 著者名/発表者名
      久永 なつみ、小川 愛子、田中 啓祥、狩野 光伸、松原 広己
    • 学会等名
      第64回日本心脈管作動物質学会
    • 発表場所
      沖縄
    • 年月日
      2017-02-10 – 2017-02-10
  • [学会発表] エポプロステノールの有効な使い方2016

    • 著者名/発表者名
      小川 愛子
    • 学会等名
      第1回日本肺高血圧症・肺循環学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-10-01 – 2016-10-01
    • 招待講演
  • [学会発表] Upfront療法の実際2016

    • 著者名/発表者名
      小川 愛子
    • 学会等名
      第1回日本肺高血圧症・肺循環学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-10-01 – 2016-10-01
    • 招待講演
  • [学会発表] What happens to the vessels when we perform BPA?2016

    • 著者名/発表者名
      Aiko Ogawa
    • 学会等名
      2016 CTEPH Treatment Advisory Meeting
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-08-08 – 2016-08-08
    • 招待講演
  • [学会発表] 岡山医療センターにおける肺高血圧症治療の最前線2016

    • 著者名/発表者名
      小川 愛子
    • 学会等名
      第2回J-ISCP国際心血管薬物療法学会日本部会学術集会
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-06-26
    • 招待講演
  • [産業財産権] モデル血管システム、シアストレス負荷用のモデル血管部及び循環器系疾患の治療薬のスクリーニング方法2017

    • 発明者名
      狩野光伸,松崎愛子,田中啓祥
    • 権利者名
      国立大学法人岡山大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2017-17692
    • 出願年月日
      2017-02-02

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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