研究課題
AKAP79/150蛋白は細胞内カルシウム動態ならびに血管トーヌスに関与している。AKAP79/150ノックアウト(AKAP-KO)マウスの大動脈平滑筋細胞を用いて、カルシウム感受性関連物質であるカルモジュリンキナーゼII(CaMKII)の遺伝子ならびに蛋白発現を検討したところ、野生型マウスと比較して、CaMKIIの遺伝子ならびに蛋白発現はともに約2倍増加していた。AKAP-KOマウスでは、エルゴノビン投与により冠攣縮が誘発されたが、カルシウム感受性亢進を抑制するとされるカルベジロールを投与したところ、エルゴノビン投与による冠攣縮誘発が抑制された。一方、カルシウム感受性抑制作用を有さないβ遮断薬であるプロプラノロールをAKAP-KOマウスに投与しても、冠攣縮は抑制されなかった。AKAP-KOマウスの大動脈平滑筋細胞を用いたin vitroの実験では、アセチルコリンによる刺激においても細胞内カルシウムイオン濃度の過度の上昇を認めなかった。カルベジロールならびにプロプラノロールを投与しても同様であった。一方、AKAP-KOマウス大動脈平滑筋細胞におけるミオシン軽鎖のリン酸化は、アセチルコリン刺激により亢進していた。プロプラノロール投与でもリン酸化の亢進は変わらなかったが、カルベジロール投与では、ミオシン軽鎖のリン酸化が抑制された(Narita, Tomita、2018 AHA)。以上から、AKAP-KOマウスでは細胞内カルシウム濃度の上昇をきたさずに冠攣縮が誘発され、カルベジロールはカルシウム感受性制御を介して冠攣縮抑制効果を示す可能性が示唆された。
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