研究課題
私達の体はいくつもの臓器から成り立っているが、それぞれの臓器がきちんと働くためには血液循環により酸素と栄養素を供給させる必要がある。この循環器系は主に心臓と血管により成り立っており、これらが生理的機能を維持することが重要である。しかしながら様々な疾患病態において、心臓あるいは血管系の異常が引きおこされる。高血圧症は心筋組織における過剰な線維化を引きおこし、心臓の機能を低下させる。肺高血圧症と呼ばれる病態では、肺血管への過剰な血流が血管壁の肥厚を惹起する。このような血圧、血流の増加により誘導される心臓および血管病変は心臓リモデリングと呼ばれるが、その分子機序はこれまで明らかでは無かった。本研究では炎症プロセスや細胞の外的環境に着目し、心臓および血管リモデリングの分子機構の探索を行った。この中で心臓に集積する炎症細胞・マクロファージが組織リモデリングに関与することを同定した。更に肺血流を増加させる病態モデルを作成して検討を行ったところ、炎症細胞・マクロファージが血流の増加した肺血管に集積することを見出した。これらの知見は炎症性マクロファージが心臓および血管リモデリング過程に密接に関与していることを示している知見として重要であると考えられた。併せて心臓線維芽細胞活性化の分子機序を理解すべく研究を行った。心筋虚血を反映する細胞外環境として無血清培地での培養を行ったところ、線維芽細胞からの細胞外基質コラーゲン産生が有意に増加することを見出した。詳細な検討を行ったところ、細胞周期の低下と関連して線維芽細胞からのコラーゲン産生が誘導されることを確認した。線維芽細胞活性化における新たな分子機構である可能性があり、臨床的意義の大きい研究成果であると考えられた。
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