研究課題
心房細動の病態を解明するため、特にマイクロRNAの関与・pannexinの関与について着目して研究を行い、バイオマーカーとしてのマイクロRNAの応用を検討した。さらに付加的な研究として、心房細動に合併する血栓形成に着目し、心原性脳梗塞の病態解明とリスク評価についての検討を行った。心房細動の発症及び慢性化に関与する重要なメカニズムとして心房リモデリングが知られており、これは心房の炎症・線維化に代表される構造的リモデリングと、心房内伝導障害に代表される電気的リモデリングに分けられる。我々は心房リモデリングに心房内のマイクロRNA発現変化が関与していることに着目し、マウス高脂肪食負荷モデル(HFDモデル)ではmiR-27bの発現が上昇し、Cx40の発現を低下させて心房内伝導障害を来すことを明らかにした。さらに、バイオマーカーとしてのマイクロRNAの有用性の検討のために心房細動症例における末梢血でのマイクロRNA発現変化とマウス心房細動モデルにおけるマイクロRNA発現変化についてそれぞれ網羅的解析を行い、その後個別の発現量解析によって新たな4つのマイクロRNAを同定した。今後各マイクロRNAの機能解析を行う予定である。さらにpannexinに関しては、心筋虚血および心臓圧負荷に対してpannexin-1が心保護的に作用していることを明らかにし、それぞれその詳細なメカニズムの解明を行っている。また、心房細動の合併症として、心房内での血栓形成による心原性塞栓症がある。我々は当初予定に追加して心原性脳梗塞に関与する心房内血栓形成の評価とそのメカニズムの解明を行い、ソニー株式会社が開発した誘電コアグロメーターを用いて血栓形成傾向の鋭敏な評価を試みた。血液の誘電率変化の微分波形より全血凝固能評価の指標を確立し、高齢者など脳梗塞リスクの高い症例では血液凝固能も亢進していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
1) 心房細動の病態に関与するマイクロRNAの同定と、バイオマーカーとしてのマイクロRNAの応用: 心房細動の発症及び慢性化に関与する重要なメカニズムとして心房リモデリングが知られており、これは心房の炎症・線維化に代表される構造的リモデリングと、心房内伝導障害に代表される電気的リモデリングに分けられる。我々は心房リモデリングに心房内のマイクロRNA発現変化が関与していることに着目した。マウス心房細動誘発モデルの中で実際に心房頻拍が効率に誘発されたHFDモデルと圧負荷モデルを用いて、心房組織でのマイクロRNA発現変化と、臨床例における末梢血でのマイクロRNA発現変化についてそれぞれ網羅的に解析を行った。各網羅的解析によって発現変化が見られたマイクロRNAのターゲット遺伝子の探索を行い、機能解析を進めている。2) 心臓圧負荷に対するPannexin-1の作用:我々はPannexin-1ノックアウトを用いて心筋虚血に対するpannexin-1の作用について検討し、pannexin-1が低酸素刺激によってATPを細胞外に放出して心保護作用を示すこと、及びIKATPチャネルとの相互作用により活動電位短縮に寄与することを明らかにした。現在、心臓圧負荷に対する作用を検討しており、Pannexin-1ノックアウトマウスでは心機能が急激に低下することを明らかにし、現在そのメカニズムを検討している。3) 心房細動に合併する心原性脳梗塞のリスク評価: 我々は、心原性脳梗塞のリスク評価として、ソニー株式会社が開発した誘電コアグロメーターを用いて血栓形成傾向の評価を行い鋭敏な評価指標を確立した。引き続いて、血液凝固過程における凝固因子Xaに着目し、Xa活性を評価する指標を発見した。現在、Xa阻害作用のある抗凝固薬を用いて、Xa活性およびその阻害薬の評価が可能か検討している。
1) 心房細動の病態に関与するマイクロRNAの同定と、バイオマーカーとしてのマイクロRNAの応用: 網羅的解析によって新たに同定された心房細動に関連するマイクロRNAについて、ターゲット遺伝子の探索と、ターゲット遺伝子発現制御による病態解明を進める。さらに、CRISPR/Cas9システムを用いてこれらのマイクロRNAのノックアウトマウスを作成し、HFDモデルを作成して心房性不整脈が抑制できるか個体レベルでの解析を進めていく。2) 心臓圧負荷に対するPannexin-1の作用: 引き続きPannexin-1ノックアウトを用いて圧負荷や機械的刺激におけるpannexin-1の心保護作用について検討していく。特に、頻拍と心機能の関係についてpannexin-1がどのように関与しているか、頻拍誘発性心筋症モデルを用いて検討する。一方、心房に多く発現しているpannexin-2に関してもノックアウトマウスの作成を終えたため、心房圧負荷モデルを作成して心房性不整脈の発症について検討する。3) 心房細動に合併する心原性脳梗塞のリスク評価: 我々は、心原性脳梗塞のリスク評価として、ソニー株式会社が開発した誘電コアグロメーターを用いて血栓形成傾向の評価を行い鋭敏な評価指標を確立した。引き続いて、血液凝固過程における凝固因子Xaに着目し、Xa活性を評価する指標を発見した。現在、Xa阻害作用のある抗凝固薬を用いて、Xa活性およびその阻害薬の評価が可能か検討していく。
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