糖尿病合併症としての心不全(糖尿病性心筋症)の特徴の一つは心臓拡張機能障害であり、その心臓における病理学的特徴には、①心臓毛細血管不全②病的心筋肥大③心臓線維化があり、これらは心臓老化の特徴と酷似する。老化制御分子WRN蛋白はテロメア制御とDNA修復を司ることにより染色体を安定的に維持するよう働くが、その欠損は老化・癌化・糖代謝異常を促進することが知られている。本研究では、WRN遺伝子変異マウスモデルを用いて、心臓老化の機序の解明を検証してきた。本研究の成果として、WRN活性抑制マウス( WRN-KD )が、上述に一致する病的心筋肥大および心臓線維化に代表される心臓拡張機能障害を呈すること、そのメカニズムとして、オートファジー異常があるという結果を得た。本マウスにおいては、仮説通り、通常マウスに比して1年早く老化の表現型が発症し、その心臓は、20週令までは心臓拡張機能障害を呈するが、原因として、心臓アポトーシスの亢進、線維化の亢進があり、当初仮設していたテネイシンは無関係であった。DNAマイクロアレイによる網羅的解析の結果、炎症および線維化遺伝子の亢進を認めた。WRN機能障害によるDNA傷害と、これら心臓リモデリングを結ぶ機序として、オートファジー異常を仮設し、これを検証したところ、WRN-KDマウスでは、オートファジー活性の異常な低下があり、その標的シグナリングとして、オートファゴソームを特定した。これらの成果は、国際シンポジウムで発表し、poster awardを受賞し、また第83回日本循環器学会のFeatured research sessionにも採択され投稿準備中である。
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