研究課題
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心保護作用を持つ生理活性ペプチドで、心負荷に応じて主に心室から分泌され、心不全のバイオマーカーとしてその有用性が確立している。近年、BNPの前駆体であり、生理活性の弱いproBNPが血中に存在し、不全心においてその分泌が亢進していること、proBNPは糖鎖修飾されていることなどが報告されてきた。申請者はproBNPの糖鎖修飾および分泌調節機序の解明に取り組み、既に心筋細胞においてproBNPのN末端に存在するO型糖鎖結合がproBNP分泌に強く関与することなどを明らかにしてきたが、本申請研究ではproBNPの糖鎖修飾・分泌調節に関与するO型糖転移酵素GALNTの役割及びそのmicroRNAなどによる発現調節機序の詳細を明らかにすべく研究を進めている。平成28年度は、糖鎖修飾を介したproBNP分泌制御へのGALNT1,2の関与、及びその発現調節機構におけるmiR-30の関与について検討した。ヒトBNP遺伝子を導入した新生仔ラットの培養心筋細胞(NRVMs)において、肥大刺激はGALNT1、2発現を増加させ、かつ培養上清中のproBNP分泌割合を亢進させた。GALNT1,2のノックダウンは培養上製中のproBNPの割合を増加させた。GALNT1及び2の3’非翻訳領域に共通してmiR-30の認識配列が存在し、肥大刺激によりmiR-30の発現が低下すること、またNRVMsへのmiR-30の過剰発現によりGALNT1及び2の発現が減少し、proBNPの分泌割合が有意に減少することを見出した。これらによりmirR-30-GALNTsによるproBNP分泌調節機序が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖構造解析についてはproBNPの高濃度の抽出が困難で試行錯誤を加えているところであるが、他について概ね順調に進展していると考える。
平成28年度の研究で得られた成果を受けて、proBNPの分泌機序について、シアル酸転移酵素の関与や、miR30-GALNT経路以外の制御機構についても検討を進めていく。またproBNPの糖鎖構造解析についても進めていく。その際、糖鎖構造解析に必要なproBNPの精製については、抗体の結合した金属ビーズなどを利用した抽出、精製法も検討している。
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