研究課題
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心保護座要を持つ生理活性ペプチドで、心負荷に応じて主に心室から分泌され、心不全のバイオマーカーとしてその有用性が確立している。近年BNPの前駆体であり、生理活性の弱いproBNPが血中に存在し、不全心において、その分泌が亢進していること、proBNPは糖鎖修飾されていることことなどが報告されてきた。本申請研究では、proBNPの糖鎖修飾・分泌調節に関与するO型糖転移酵素GALNTの役割及びそのmicroRNAなどによる発現調節機序の詳細を明らかにすべく、研究を進めている。前年度はGANT1およびGALNT2の関与、及びその発現調節におけるmiR-30の関与について、検討し、miR-30-GALNT1/2によるproBNP分泌調節機序について明らかにしたが、平成29年度は、前年度に引き続き、let-7についての検討を進める一方で、シアル酸転移酵素についての関与について、シアル酸付加不全変異細胞(CHO-Lec2細胞)を用いた検討をした。具体的にはCHO-Lec2細胞にレンチウィルスを用いてヒトproBNP遺伝子及び、糖鎖修飾を欠如した変異体ヒトproBNP遺伝子を導入し、その培養上清中のproBNP及びBNPを測定し、その割合を測定することにより、シアル酸転移酵素がproBNP分泌に関与していることを示唆するデータを得つつある。また糖転移酵素によるproBNP糖鎖構造への影響についての解析のために、質量分析を用いて糖鎖構造解析についても進めている。野生型ヒトproBNP、及び糖鎖結合を欠如した変異体ヒトproBNPの遺伝子を導入した培養細胞の培養上清を採取し、そこからproBNPを抽出したものを用いて解析を試みているが、もともと存在する濃度が薄く、高度の濃縮が必要となり、ビーズ付きの抗体やカラムでの精製を試みている。
3: やや遅れている
概要にも述べたが、糖鎖構造解析において高濃度のproBNPサンプルが必要であり、培養細胞を用いた変異体を含む種々のproBNPを含む培養上清からのproBNPの抽出が困難であることや、変異培養細胞を用いたシアル酸転移酵素に関連した実験についても、シアル酸転移欠損変異培養CHO細胞では、proBNPのプロセシング酵素であるfurinの発現が低く、糖鎖によるプロセシングの違いの評価が困難であったため外来性にfurinを導入するなどの工夫が必要となったことなどより、予定より研究の進捗が少し遅れ気味となった。
今後については、糖鎖構造解析のための高度に精製されたproBNPを得るための手法が重要であるが、まず培養細胞上清由来のproBNP抽出についてはビーズ付きの抗体やカラムでの精製を試みている。また一方で、患者検体のproBNP値の測定から、proBNP濃度が非常に高値である患者検体が存在し、proBNPやNT-proBNPを患者検体から抽出し、それを分析することも検討している。なお患者検体での解析については京都大学医の倫理委員会の承認を得ている。これらの方法によってproBNPの糖鎖構造解析を進め、その手法や結果に基づいて、実験計画書に則り、種々の条件下での心筋細胞からのproBNPや種々の疾患における血中proBNPについて、その糖鎖構造解析をするなど、研究を進めて予定である。
本年度は若干の実験の遅れがあり、物品が本年度の使用予定より下回ったため次年度使用額が生じたが、次年度はその遅れを取り戻す対策を講じており、次年度使用額の物品費などに充当した使用を予定している。
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