研究課題/領域番号 |
16K09499
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牧山 武 京都大学, 医学研究科, 助教 (30528302)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝性不整脈 / iPS細胞 / 遺伝子 / 突然死 / 突然死 |
研究実績の概要 |
本年度は、遺伝性不整脈疾患の病態解明を目指し、以下の研究を行い論文発表を行った。 1.LMNA関連心筋症における心症状発症リスク因子の解析 LMNA遺伝子は、核膜の裏打ち蛋白であるlamin A, Cをコードし、その遺伝子異常によりlaminopathyと呼ばれる様々な疾患を引き起こす。心臓では、拡張型心筋症+心臓伝導障害を呈することが知られている。我々は、77症例、45家系におけるLMNA関連心筋症多施設コホート研究により、truncation mutationが心臓伝導障害、心房性不整脈、左室駆出率低下早期発症のリスク因子であることを見出した。本知見により遺伝子解析は診断のみならずリスク層別化にも有用である可能性が示唆され、truncation mutationキャリアーはより注意深いフォローが必要であると考えられる。 2.SCN5A-D1275N関連心臓ナトリウムチャネル病に関する疾患特異的iPS細胞研究 SCN5Aは電位依存性心臓ナトリウムチャネルαサブユニット(NaV1.5)をコードし、その遺伝子異常により様々な遺伝性不整脈疾患が引き起こされることが知られている。中でもSCN5A-D1275N変異は、心臓伝導障害や拡張型心筋症を呈する特徴があり、疾患発症メカニズムは未だ解明されていない。我々は、SCN5A-D1275N患者由来hiPSC分化心筋においてナトリウムチャネルコンダクタンスの低下、NaV1.5蛋白発現量の低下を認め、これらのNav1.5機能低下は、患者の心臓伝導障害に合致する所見と考えられた。また、そのメカニズムにチャネル蛋白のユビキチネーション促進が関与していることを示した。今後、本hiPSCモデルを用いたSCN5A-D1275N関連心臓ナトリウムチャネル病の更なる疾患発症機序解明、治療法開発への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LMNA関連心筋症における表現型、遺伝型解析、また、複数の遺伝性不整脈疾患において患者iPS細胞を用いた疾患モデル構築、発症メカニズムの解明を行っており、論文発表も行い、進捗状況は概ね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝性不整脈・心筋症において疾患特異的iPS細胞モデルの確立、治療法開発を目指した研究を行っていく。 課題としては、iPS細胞由来分化心筋は未熟な心筋であり、静止膜電位が浅い、自動能を有するなど成熟心筋と異なる点がある。病態の正確な理解のため、分化心筋においてIK1 dynamic clampを用いた静止膜電位の安定化、in silico modelを用いた実験結果の検討を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定のiPS細胞樹立株が次年度に変更となったため。 iPS細胞培養、心筋分化試薬等に使用予定。
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