研究課題
本研究開発は、ゲノム編集技術を難治性重症心不全治療へ応用する基盤技術を整備することを目的とし下記の項目に沿って推進した。1.対象疾患のゲノムDNA診断:難治性心筋症症例を対象に、疾患遺伝子パネル解析を用いた原因遺伝子の同定を行った。高齢期に急速な心機能低下を認めた症例において、PKD1遺伝子のヘテロ接合型フレームシフト変異を同定し報告した。2.CRISPRによる心筋ゲノムDNA修復基盤技術開発:ターゲット特異的なガイドRNA設計、DNA切断活性評価、相同組み替えベクターの設計、及び相同組み換え修復による培養心筋細胞における遺伝子改変を行った。Cas9恒常発現マウス培養心筋細胞を用い、アデノ随伴ウイルスを用いて、ガイドRNA及び修復テンプレート遺伝子を導入し、ハイコンテントイメージ解析による経時的観察を行うことで、心筋細胞において相同組み換え修復が生じることを見出した。次に、DNA取り込みをEdUにより標識することで、心筋細胞における相同組み換え修復に、細胞周期S期侵入は必ずしも必要ないことを証明した。さらに、トロポニンT遺伝子に変異をもつ拡張型心筋症モデルマウス培養心筋細胞に対してゲノム編集を行い、12.5%の効率で正確な相同組み換えによる修復に成功した。3.CRISPRによる心筋ゲノム修復基盤技術の安全性評価方法の開発:上述の拡張型心筋症モデルマウス培養心筋細胞を対象とした実験では、42.5%の非相同末端結合を認めた。相同組み換え効率の改善が今後の課題である。4.効率的な治療コンポーネントの組織送達法の確立:野生型マウス培養心筋細胞に対して、Cas9をmRNAで導入し、アデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入と組み合わせ、相同組み換え修復に成功した。但し、Cas9恒常発現心筋細胞を用いた場合に比べてその効率は低く、今後さらに改良を重ねる必要がある。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (3件)
International Heart Journal
巻: 60 ページ: 220~225
https://doi.org/10.1536/ihj.18-184