研究課題
ヒト心不全臨床マーカーとミトコンドリア機能の相関解析に関しては、心不全重症度指標であるBNP値とミトコンドリア機能を表すと考えられるTc-MIBI洗い出し率(WR)に相関関係を認め、心不全重症化にミトコンドリア機能低下が関与している可能性が考えられた。更に心不全治療反応性に関しても、左室リバースリモデリングの有無とTcMIBI-WRに着目し解析したところ、リバースリモデリングした症例は、Tc-MIBI WRが低値でありミトコンコンドリア機能は治療反応性を予測する因子となりうる可能性が示唆された。ヒト心不全病態においてミトコンドリア機能は心不全の重症度及び治療反応性に関与していると考えられ、本研究目的であるミトコンドリア機能改善を目標とした治療法の妥当性を示唆するデータと考えられる。G0s2分解機序解明に関しては、現在E3ライブラリーのスクリーニング中でありG0s2に対する特異的E3の同定を試みている。創薬を目指したG0s2分解抑制薬のスクリーニングに関してはEGFP-G0s2恒常発現細胞株を樹立し、一次スクリーニングとしてIN Cell Analyzerを用いたハイスループットスクリーニングを行い候補化合物を複数同定した。更に培養心筋細胞に対する細胞保護作用を持つかを二次スクリーニングとして行った。我々が独自に確立したミトコンドリアATP産生能アッセイ系である、MASCアッセイおよびMit-ATeamアッセイにてATP産生増強作用をもつ候補化合物の同定に成功した。引き続き、生体(ゼブラフィッシュ、マウス)を用いて候補化合物を用いたATP産生能の評価を独自のアッセイ系にて評価していく予定としている。
2: おおむね順調に進展している
ヒト心不全臨床マーカーとミトコンドリア機能の相関解析に関しては左室リバースリモデリングの有無とミトコンドリア機能に相関が見られた。今後症例数を更に増やして相関関係について検討する予定としている。G0s2特異的E3の同定に関しては現在、E3ライブラリーのスクリーニングを行っているが、コントロールとして必要な分解されないG0s2 mutantの作成にやや難渋したこともあり、同定には至っていない。G0s2蛋白分解抑制作用をもつ化合物の一次スクリーニングは順調に進み、候補化合物を同定した。しかしながら1次スクリーニングにて得られた化合物の中には細胞毒性を持つ化合物も多く、再度一次スクリーニングを繰り返す必要があった。細胞保護効果を確認する二次スクリーニングでかなり候補化合物の数は減少したものの、現在培養心筋細胞を用いた独自のATP産生能アッセイ系においてATP産生能増強を持つことが確認された薬剤を同定することが出来た。
現在まで概ね当初の予定通り順調に進展しており、今後も当初の研究計画に従い実験をすすめていく。具体的にはヒト心不全症例を用いた検討に関しては、左室リバースリモデリングとミトコンドリア機能、更には電子顕微鏡を用いたミトコンドリア微小形態について検討をすすめていく。G0s2分解抑制薬のスクリーニングに関しては、今後ゼブラフィッシュおよびマウスを用いた生体イメージング系を用いて、虚血耐性、臓器保護保護効果を確認することによってG0s2に着目した創薬研究の強固なProof of Conceptを獲得する事を目的としている。
機能解析に関して細胞を用いた機能解析に予想以上に時間を要し、生体を用いた機能解析を行うことは次年度に持ち越すことになり、余剰金が発生した。
候補化合物の効果を生体で確認するために、ゼブラフィッシュおよびマウス生体を用いた機能解析を行う計画としている。
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