研究課題
我々は、心筋筋小胞体のCa2+放出チャンネルであるリアノジン受容体(RyR2)からRyR2の修飾蛋白の一つであるカルモジュリン(CaM)が解離することによってRyR2が構造変化を来たし、不全心筋や致死的不整脈等でみられるRyR2からの異常なカルシウム放出に寄与していると報告してきた。しかし、RyR2から解離したCaMの役割については、まだ解明されていなかった。本研究では、RyR2から解離したCaMの役割を解明するとともに、心不全や心肥大のシグナル伝達にRyR2から解離したCaMがどのように関わっているかを検証した。心肥大を惹起するアンジオテンシンII (AngII)を心筋細胞に負荷し、内因性CaMの細胞内動態を評価したところ、AngII負荷によりRyR2に結合しているCaMは減少し、核内のCaMは増加していた。さらに、CaMの核内移行のキャリアーとなり得るGRK5の細胞内動態も評価したところ、AngII負荷によりCaMと同様に核内のGRK5発現量は増加していた。また、心肥大シグナル伝達を担うヒストン脱アセチル化酵素(HDAC5)は核外に移行しており、心肥大のシグナルが活性化されていることが実証された。次に、RyR2からのCaMの解離を抑制すると言われているダントロレンをAngIIやPEを負荷する前に投与したところ、RyR2からのCaMの解離、核内へのCaMの移行や、核内GRK5発現量も抑制され、HDAC5の核外への移行も抑制された。さらに、特異的にRyR2のCaMを強制的に解離されるスラミンを負荷した心筋細胞やTACモデルでもCaM、GRK5、HDAC5の細胞内動態を評価したところ、AngII負荷と同様な動態を示した。この結果からRyR2からのCaMの解離を抑制することやGRK5の核内移行を抑制することで、心肥大や心不全の進展を抑制できる可能性があることが示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 125 ページ: 87-97
https://doi.org/10.1016/j.yjmcc.2018.10.011