研究課題/領域番号 |
16K09503
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
青野 潤 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師(特定教員) (70512169)
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研究分担者 |
末廣 千佳 愛媛大学, 医学部附属病院, 医員 (00770356)
坂上 智城 愛媛大学, 医学部附属病院, 医員 (40725917)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テロメア合成酵素 / 大動脈弁狭窄症 / 石灰化 / 炎症/増殖性疾患 |
研究実績の概要 |
高齢化と生活習慣の欧米化が進み、冠動脈疾患、脳卒中とともに心臓弁膜症の一つである大動脈弁狭窄症(Aortic valve stenosis: AS)の罹患率(先進国で65歳以上の2-4%)も急激な増加の一途を辿っている。ASは加齢により心臓弁膜の硬化/狭窄を生じ突然死・急性心不全など致命的病態を生じる最重症心疾患の一つである。 テロメア合成酵素(テロメラーゼ)は癌を含めた炎症/増殖性疾患の発症・進展に関与することが報告されている。またAS病変と病理学的に酷似した動脈硬化の進展にテロメラーゼが 関与することが報告されておりASの発症・進展にも関与する可能性が高い。そこで本研究ではヒト大動脈弁検体及び主要構成細胞である大動脈弁間質細胞を用いてASの進行における新規ターゲットとしてテロメラーゼの関与を検討する。 平成28年度は大動脈弁狭窄症の大動脈弁を弁置換手術患者より採取し,それぞれ組織分析用(凍結切片、パラフィン切片)、RNA抽出用、蛋白抽出用、細胞採取用に分割し回収・保存を進めている。また正常弁を 剖検症例から採取し同様の処理を行っている。まずヒト大動脈弁の組織学的解析を進めるためヘマトキシリン・エオジン (H.E.) 染色、エラスチカ・ワンギーソン (EVG) 染色(弾性線維)、PAS染色(多糖類:グリコーゲン・粘液タンパク、糖タンパク、糖脂質など)、マッソントリクローム染色(膠原線維)を施行し解析を進めている。 また、弁の石灰化を検討するための染色としてvon Kossa染色、各種免疫染色を含めた組織学的解析を進めている。 加えてブタの大動脈弁、正常弁、狭窄弁から大動脈弁間質細胞を採取培養し石灰化刺激を施行し各種実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は弁置換術の症例が少なくサンプルの回収に難渋した。現在は順調にサンプルが回収できている。 また細胞実験で石灰化刺激を使用しているが当初ブタの大動脈弁間質細胞で試みたところ刺激期間である3週間で予測と比べて過度の細胞増殖により細胞が剥離することや、ヒトの大動脈弁間質細胞で同様の刺激を施行した場合、ブタとヒトの大動脈弁間質細胞の性質の違いにより予測に比して石灰化、細胞増殖の割合が少ないなど刺激法を適正化するのに時間を要した。現在は刺激法並びに石灰化の評価法を確立している。
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今後の研究の推進方策 |
現在正常弁、狭窄弁においてテロメラーゼ活性をTRAP assay (Telomeric Repeat Amplification Protocol)を用いて、テロメア合成酵素の主要構成成分であるTelomerase Reverse Transcriptase (TERT)の遺伝子発現をReal-Time PCR、ウエスタンブロティング、サンドイッチELISA法、免疫染色を用いて解析を進めている。また正常弁、狭窄弁より大動脈弁間質細胞を採取し石灰化刺激を施行して同様にテロメラーゼ、TERTの遺伝子発現の解析を進めている。 TERTを過剰発現、遺伝子ノックダウンさせるためのレンチウイルスベクター、TERTのプロモーター活性を検討するためのプロモーターベクターを大腸菌で増幅させ準備を進めている。 HEK293細胞にレンチウイルスベクターとバッケージングベクターを導入し上清のウイルスを回収しTERTを過剰発現、発現低下させるための組み替えレンチウイルスを作成している。 平成29年度以降は大動脈弁間質細胞など大動脈弁狭窄症に関与する細胞にレンチウイルスを使用しTERTを過剰発現、発現低下させることで、TERTの病態への関与を検討する予定である。加えてTERTのプロモーターベクターを細胞にTransfectionし石灰化刺激などを含めた各種刺激に対するプロモーター活性を検討する。 また手術で回収した大動脈弁サンプル並びに正常弁、狭窄弁より採取した大動脈弁間質細胞に石灰化刺激を施行しマイクロアレイで網羅解析を行うことによりテロメラーゼ、TERTに関与する遺伝子並びに病気の進行に関与する標的遺伝子を検討しウエスタンブロティング、免疫染色で再確認を行う予定である。加えてテロメラーゼ、TERTとその標的遺伝子の相互作用を共免疫沈降法やクロマチン免疫沈降アッセイを用いて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりも初年度の研究達成度にやや遅延が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費に当てる予定である。
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