研究課題/領域番号 |
16K09505
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
矢野 俊之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (40444913)
|
研究分担者 |
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 講師 (00398322)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | オートファジー / ネクロプトーシス / ネクローシス / 心筋細胞 / TNF-alpha / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
ネクローシスとオートファジーの分子機構連関 a)ラット心筋芽細胞(H9c2細胞)を用いて、ネクロプトーシスを誘導するために、TNF-α(TNF, 50 ng/ml)とカスパーゼ抑制薬(z-VAD-fmk: zVAD, 20 μM)の同時投与(TNF/zVAD)を用いた。ネクロプトーシスの指標として、培養液中のLDH活性とRIP1とRIP3の結合(免疫沈降法で評価)を用いた。TNF/zVAD刺激は、vehicle刺激群の約4倍まで培養液中のLDH活性を増加させ、このTNF/zVADの効果はRIP1抑制薬及びRIP3抑制薬によって完全に遮断されたことから心筋細胞においてもネクロプトーシスが誘導されることが明らかとなった。一方で、ミトコンドリア透過性遷移孔開口抑制薬はTNF/zVADによる細胞死に影響を与えなかった。 b)TNF/zVADにより、LC3-IIが増加し、bafilomycin A1によるリソソーム機能阻害でさらに増加しなかったことからTNF/zVADはオートファゴソームとリソソームの結合以降のレベルでオートファジーを阻害していると思われた。この知見は、RFP-GFP-LC3発現によるautophagic fluxの詳細な解析により確認された。さらに、TNF/zVADによりRIP1とp62の結合が増加し、LC3とp62の結合が低下していた。このTNF/zVADの効果はmTORC1活性抑制によりオートファジーを促進するrapamycin (10 nM)により遮断された。さらに、Rapamycin(10 nM)は、TNF/zVADによるネクローシスを軽減させた。 c)以上から、ネクロプトーシス誘導機構においてオートファジー機能低下が重要な役割を果たしていた。さらにmTORC1抑制薬はネクロプトーシス軽減により心筋保護作用をもたらす可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、mTORC1の恒常的活性化が左室機能障害をもたらす分子機構として二つの異なる機序のネクローシスに注目した。実験結果から、mTORC1阻害薬はオートファジー促進を介してネクロプトーシスを軽減することが明らかとなり、ミトコンドリア透過性遷移孔開口は寄与していないことが判明した。さらにネクロプトーシス刺激がオートファジーを障害する分子機構の一部を解明することができた。以上のとおり、ネクロプトーシスとmTORC1依存性オートファジーの関連に注目して分子機構を解明し、既に論文を投稿することができたため、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
最近、ネクロプトーシスが虚血再灌流障害や心不全の病態形成に関与していることが繰り返し報告されている。これまでの実験結果から、mTORC1阻害薬はオートファジー促進を介してネクロプトーシスを軽減することが明らかとなり、ミトコンドリア透過性遷移孔開口は寄与していないことが判明した。そのため、ネクロプトーシスとmTORC1依存性オートファジーの関連に注目して分子機構を解明していく。さらに、in vivoでのネクロプトーシス/オートファジー連関を解析予定である。 また、当初の計画通り、”mTORC1恒常的活性化によるリボソームストレスがERストレス及びミトコンドリア機能に与える影響”にも注目していく。前年度の予備的検討でリボソームストレス誘導蛋白であるp53がネクロプトーシスの誘導機構に関与していることを明らかにしており、特にp53とネクロプトーシス及びmTORC1依存性オートファジーの関連に注目して分子機構を解明していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の計画として、初年度に多くの経費が必要になると想定していた。そのため、交付決定額も初年度に多く設定して頂き、おおむね予定通りに進行していたが、わずかながら残金(222円)が発生したため次年度使用額とした。
|
次年度使用額の使用計画 |
初年度に心筋細胞におけるネクロプトーシスとオートファジーの新たな分子機構連関を解明することができた。次年度は初年度の内容を発展させ、リボソームストレスによって誘導されたp53のネクロプトーシス・オートファジー連関における役割を解明していく。
|