研究課題
本研究では心筋細胞の肥大核におけるDNAメチル化をまずヒトの心筋生検標本にて検討し新機能など病態との関連を調べさらに動物の心不全モデルにてDNAメチル化阻害薬によるエピジェネティック介入を行い心不全に対する治療の可能性を探索することを目的とした。まずヒト心不全における心筋細胞核肥大びおいてエピジェネティック変化(DNAメチル化の頻度と核内分布)を検討し心機能・心筋病理など病態との関連を調べた。すなわち心不全を呈する拡張型心筋症75症例、心不全のないコントロール20症例の心筋生検標本を用いて5-methylcytosine(メチル化DNA)の免疫染色ならびに免疫電顕を施行したところメチル化DNA陽性細胞の頻度が心不全で有意に増加していたが、増加がみられたのは心筋細胞に限定されておりその他の非心筋細胞においては心不全とコントロールで差が見られなかった。免疫電顕ではメチル化DNAの局在はヘテロクロマチンに集中していた。さらにメチル化DNA陽性心筋細胞の頻度は左室リモデリングの程度と正の相関を左室機能と負の相関を示した。次に動物実験にてDNAメチル化の心不全における病態生理学的意義について調べた。モデル動物としてδ-Sarcogycan欠損心筋症マウスを用いた。本動物は繁殖力が弱く実験開始に手間取ったものの最近ようやくDNAメチル化阻害薬投与による生存率の変化を調べることができた。10週令のマウスに5-azacytidine 1 mg/kg/dayを投与したところ、6週後の生存率は無治療群では69%(11/16)に対し治療群で100%(4/4)と有意差は無いものの上昇した。現在治療群の動物数を増やしかつ心筋組織を病理学的並びに生化学的に解析中である。
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Heart Failure Review.
巻: 23 ページ: 759-772
10.1007/s10741-018-9708-x.