研究課題/領域番号 |
16K09515
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
川合 宏哉 神戸大学, 医学研究科, 客員教授 (20346266)
|
研究分担者 |
原 哲也 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (70547504)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 血管新生 |
研究実績の概要 |
JCADが血管新生を制御し、これを介して動脈硬化プラークの不安定化を制御していることを明らかにするため、以下の研究を行う。(1) in vitroの培養血管内皮細胞を用いたJCADの血管新生の役割の解明(migration assay, tube formation等)、(2) in vivoにおけるJCADの血管新生における役割の解明(生理的脈管形成、tumor growth modelによる腫瘍血管新生能)、(3)JCADが血管新生を制御する分子メカニズムの解明、(4) JCAD/ApoEダブルノックアウトマウスの作製と、これを使用した vasorumの評価及び動脈硬化プラーク不安定性の評価を行う。 A) in vitroの培養血管内皮細胞を用いたJCADの血管新生の役割の解明 培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対してsiRNAやtransfection法を用いたJCADのノックダウンや過剰発現を誘導し、(1)WST-1アッセイによる細胞増殖能、(2)wound healing modelによる細胞遊走能、(3)tube formation による血管新生能を比較検討したところ、いずれにおいてもJCADの特異的ノックダウンにより増殖能、遊走能、血管新生能が低下した。 (B)JCAD-/-マウスの生理的脈管形成への影響 作製されたJCAD-/-マウスは少なくとも胎生致死はおこらず、肉眼上は野生型と変化を認めなかった。生理的な血管発生に異常がないことを確認するために、マウス網膜血管の解剖をFITCの静脈投与後の摘出眼球において組織学的に明らかにしたが、解剖学的には明らかな差は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11月からの中途採択であったにもかかわらず、当初予定の8割り程度は進行しており、順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
(B-2) tumor growth modelによる生体内での腫瘍血管新生能 JCAD-/-マウスと野生型マウスに対してメラノーマ癌細胞(B16F10)及び肺腺癌細胞株(LL/2)を皮下注し、その増殖を経時的に2日毎に観察し、その増殖速度を比較する。2週間後に安楽死させ、腫瘍組織を取り出し、血管内皮細胞のマーカーであるCD31染色によって腫瘍内の血管新生の程度を評価する。新生血管の成熟度を比較するために、α平滑筋アクチン(SMA)との二重染色も行い、SMAを伴わない未熟な血管新生の割合も比較検討する。成熟した新生血管は血管周囲をSMAにより覆われているが、逆に未成熟なものはSMA陰性となることが知られている。 (C) JCADが血管新生を制御する分子メカニズムの解明 (A)-(B)のin vitro及びin vivoの解析によってJCADが血管新生を制御することが明らかになれば、血管内皮の接着因子であるJCADがどのような分子機序で血管新生を制御しているかを検討する。 VEGF刺激によるtube formationがJCADのノックダウンにより低下したという予備実験の結果からJCADはVEGF刺激による血管新生のシグナルカスケードを制御している可能性が高く、VEGFを介した血管新生の制御機構に焦点をあてて解析を行う。1.HUVECに対してJCADをsiRNAによりノックダウンする。VEGF刺激後のシグナル伝達には種々の経路があるが、Rap1等のsmall G蛋白、Akt、ERKやeNOSの活性化の変化を解析することによって、どのシグナル伝達経路が傷害されるのかを明らかにする。2.VE-カドヘリンやインテグリン等の血管新生を制御する分子はVEGF受容体の活性化を制御する。JCADのVEGF受容体活性化への影響を明らかにする。siRNAによるJCADのノックダウンによるVEGFRの活性化の変化を解析し、JCADによるVEGFR活性の制御機構を解明する。
|