研究実績の概要 |
本研究の目的は、動脈硬化予防のために、制御性T細胞(Treg)を利用した免疫寛容誘導法を確立し、臨床応用するための基盤を確立することである。本年度は、皮膚から紫外線を利用したTreg誘導による動脈硬化予防の研究成果について、昨年に引き続きUVB照射によりマウス動脈瘤モデルでの予防効果を証明して報告できた(Hayashi T, Sasaki N, Yamashita T, et al. J Am Heart Assoc., 6, e007024, 2017)。皮膚治療で臨床応用されている方法を、血管疾患の予防法として応用する新たな取り組みにつなげたい。 もう一つの成果としては、腸管免疫修飾による免疫寛容誘導研究について、ある乳酸菌を動脈硬化モデルマウスに投与することで、PD-L1陽性の免疫寛容性樹状細胞を誘導し、PD-1経由でT細胞機能を抑制することにより、動脈硬化が抑制できることを示した(Mizoguchi T, Kasahara K, Yamashita T et al. Heart Vessels., 32, 768~776, 2017)。2つの報告ともに、免疫寛容誘導による動脈硬化予防を達成した成果である。 Cytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA-4)の動脈瘤における役割も検討しており、その分子の役割が一部解明できつつあり、治療への応用を意識した詳細な機序の解明を実施している段階である。 当初、重要課題の一つと考えていた抗原特異的Treg細胞の誘導に関しては、昨年の報告書内の今後の研究の推進方策に記載したように、現状では困難と考えて、研究自体を中断した。 それに変わり、腸内細菌叢の調査から、厳密には免疫寛容の誘導ではないが、腸管免疫修飾からの動脈硬化予防の研究として、抗炎症細菌の開発を進めており、特許出願にまで至った。
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