研究課題
動脈硬化の発症には、血管における慢性炎症が重要な役割を果たしている。慢性炎症の惹起には、マクロファージの活性化が重要であるが、その機序は不明な点が多い。本研究はToll-like受容体(TLR9)とそのリガンドとなる自己由来の遊離核酸断片の役割について研究を行っている。これまで、動脈硬化マウスであるアポリポ蛋白E(ApoE)欠損マウスとTLR9欠損マウスを交配したApoE/TLR9 dKOマウスは、通常のApoE欠損マウスと比較して、アンジオテンシンII誘導下での動脈硬化病変の進展が抑制されていることが判明した。動脈硬化病変の組織学的検索において、各種炎症性物質の発現がApoE/TLR9 dKOマウスで低下しており、TLR9の欠損によって、血管の炎症が減弱することが推測された。さらに、定量的PCRなどの各種分子生物学的手法を用いて炎症性物質の発現を検討したところ、ApoE/TLR9 dKOマウスは、ApoE欠損マウスと比較して、炎症性物質の発現が低下していることも確認できた。腹腔内マクロファージを用いた検討でも、ApoE/TLR9 dKOマウス由来のマクロファージは、ApoE KOマクロファージに比べて、TLR9アゴニストなどの刺激化における、炎症性物質の発現が低下していた。現在、骨髄移植によって作製した骨髄特異的TLR9発現/欠損ApoE欠損マウスの解析と、TLR9欠損が、動脈硬化や炎症を抑制する分子機序を検討している。一部の結果は2016年11月に米国ボストンで開催された International Vascular Biology Meeting で発表を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していたin vivo実験が順調に経過し、現在、最終の解析段階である。分子メカニズムの解析も並行して、行うことができており、可能であれば、H29年度内に、論文化を行う予定である。
in vivo実験とin vitro実験のまとめを行いながら、論文化に向けて不足データの収集に努める。臨床検体を用いた検討にも検討領域を広げていきたいと考えている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 8件)
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