研究課題
平成29年度は『研究1. 2/3腎摘triple NOSs-/-マウスの急性心筋梗塞(AMI)の性差におけるアンドロゲンの作用の解明』と『研究2. 脳梗塞におけるNOSsの傷害的役割の解明』を実施した。研究1の研究実績の概要は以下の通りである。2/3NX triple NOSs-/-マウスの死因の約90%が心筋梗塞であることから、本研究では死亡率を心筋梗塞発症の大まかな指標とした。2/3NX triple NOSs-/-マウスの死亡率は、メスに比してオスで著明に高かった。精巣摘除術(ORX)は偽手術(sham)と比較してオス2/3NX triple NOSs-/-マウスの死亡率を著明に低下させた。このORXの有益な作用は、テストステロンの慢性投与により有意に抑制された。以上より、2/3NX triple NOSs-/-マウスの死亡率(心筋梗塞発症率)の性差の機序には、テストステロンの増悪作用が関与していることが示唆された。研究2の研究実績の概要は以下の通りである。中大脳動脈閉塞(MCAO)24時間後の脳梗塞サイズは、オス野生型(WT)マウスに比してオスtriple n/i/eNOSs-/-マウスで著明に小さかった。MCAO 24時間後の神経障害スコアおよび死亡率も、オスWTマウスに比してオスtriple n/i/eNOSs-/-マウスで有意に低かった。ORXはtriple n/i/eNOSs-/-マウスの脳梗塞サイズを有意に増大させた。このORXの作用はテストステロンの投与により有意に抑制された。以上より、NOSsは脳梗塞において傷害的役割を果たしていることが示唆された。この機序にはテストステロンが一部に関与していることが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
『研究1. 2/3腎摘triple NOSs-/-マウスの急性心筋梗塞(AMI)の性差におけるアンドロゲンの作用の解明』と『研究2. 脳梗塞におけるNOSsの傷害的役割の解明』のどちらもおおむね順調に進捗している。これまでに得られた結果から、テストステロンは、NOSsが正常に発現している状況では、心筋梗塞では有益な作用を、脳梗塞では有害な作用を発揮しているが、NOSsの発現が破綻した状況(加齢など)では、心筋梗塞では有害な作用を、脳梗塞では有益な作用を発揮していることが明らかになってきている。
『研究1. 2/3腎摘triple NOSs-/-マウスの急性心筋梗塞(AMI)の性差におけるアンドロゲンの作用の解明』では、NOSs非存在下でのアンドロゲンの有害な心血管作用を冠危険因子に着目して検討する。『研究2. 脳梗塞におけるNOSsの傷害的役割の解明』では、オスtriple n/i/eNOSs-/-マウスの脳梗塞におけるアンドロゲンの作用の分子機序を各種シグナル分子の定量解析により検討する。
平成28年度に研究が当初の計画よりも早く進捗したため研究経費が足らなくなり、平成29年度に前倒し支払いを請求した。請求額のほとんどは使用したが、直接経費で約22万円、間接経費で約16万円の残額が生じた。残額はわずかであり、次年度は問題なく使い切ることが出来ると考えている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Am J Respir Crit Care Med
巻: 198 ページ: 232-244
10.1164/rccm.201709-1783OC
日本薬理学雑誌
巻: 151 ページ: 148-154