研究課題/領域番号 |
16K09523
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
川浪 大治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50568889)
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研究分担者 |
宇都宮 一典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50185047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血管内皮機能 |
研究実績の概要 |
今年度はin vitroでの実験を中心に研究を進めた。mDia1の血管内皮での役割を明らかにするため、siRNAをヒト大動脈内皮細胞(HAEC)にトランスフェクションしてmDia1ノックダウン細胞を作製した。そして、脂質メディエーターであるlysophosphatidic acid (LPA)で刺激を行い炎症マーカーの発現を検討した。その結果、HAECにおいてケモカインであるmonocyte chemoattractant protein (MCP)-1 mRNAの発現がLPA刺激によって上昇したが、mDia1ノックダウン細胞ではコントロール細胞に比べてさらに発現が亢進することが明らかになった。この結果から、mDia1が動脈において血管内皮保護的に作用する可能性があると考え、メカニズムの検討を行った。はじめに、mDia1の発現がLPAによってどのように変化をするか確認を行った。しかしながら、mDia1の発現はmRNAレベルにおいてもタンパクレベルにおいても変化が認められなかった。次に、NF-kBに着目して検討を進めた。MCP-1はそのpromoterにNF-kB結合サイトを持ち、NF-kBによって発現制御を受けている。このため、mDia1によるNF-kB制御機構について検討を行った。HAECをLPAで刺激しNF-kBのコンポーネントであるp65のリン酸化および核内移行について解析を行った。LPA刺激によってコントロール細胞においてp65のリン酸化と核内移行が促進されたが、mDia1ノックダウン細胞ではこれらp65のリン酸化および核内移行がさらに助長されることが明らかになった。以上の結果から、mDia1が少なくともヒト大動脈の血管内皮細胞では保護的に作用している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
mDia1は低分子量GタンパクRhoのエフェクターであるが、もうひとつの主要なエフェクターであるRho-kinaseは血管内皮機能障害を惹起することが知られており、mDia1とRho-kinaseが相互に制御し合い血管内皮機能障害を規定している可能性がある。この点についての検討がまだ十分ではない。また、細胞種によってもmDia1が異なる機能を持つ可能性がありさらなる検討が必要である。mDia1の活性化を直接的に解析できないことも解決すべき課題である。現在のところmDia1の標的であると考えられているSrc活性を介してmDia1活性を間接的に評価しているが、LPA刺激ではmDia1の発現量が変化しないことを考慮すると、活性を定量化する方法の確立が重要である。これらの課題が残っていることから進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは同じRhoのエフェクターであるmDia1とRho-kinaseが互いにどのように作用し炎症を制御しているのかを検討したいと考えている。このために、Rho-kinaseを抑制している状況下でのmDia1の発現プロファイルや活性の変化を詳細に検討する。これに加え、mDia1ノックダウン細胞におけるRho-kinase活性についても検討を行う。さらには遺伝子改変マウスを用いて動脈硬化モデルを作製し、mDia1による血管内皮機能調節機構を明らかにしていきたい。Rhoのエフェクターという広い観点から研究を考え、適宜方針の再検討を加えつつプロジェクトの進行を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に遅滞が生じたため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画を進める際にこれらの研究費を充て、プロジェクトを進行する。
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