血管内皮機能調節機構におけるmDia1の役割を検討するため、今年度はin vivoでの解析を主に行った。低分子量GタンパクRhoの主要エフェクターであるmDia1、ROCK1およびROCK2の血管内皮機能障害発症機転における役割を明らかにするために遺伝子改変マウスを用いて解析を行った。これまでの培養血管内皮細胞を用いた検討では、Rhoのエフェクターの中でROCK2が血管内皮特異的に機能することを確認していたため、ROCK2が欠損した状態でmDia1がどのような動態をとるのかについて検討を行った。血管内皮特異的ROCK2欠損マウスではROCK2の発現がほとんど失われていることを確認した後、高脂肪食負荷を行った。摘出した大動脈からRNAを抽出しリアルタイムPCRを行った。その結果、ベースラインではmDia1の発現レベルは変化がなかったが、高脂肪食負荷を行うとmDia1の発現が約1.5倍上昇する傾向にあったが、有意差には至らなかった。またROCK1についても有意な発現レベルの変化はなかった。同マウスから腎を摘出して同様の検討を行ったが、このような傾向は認められなかった。mDia1が他のRhoエフェクターが存在しない環境下で代償的な機能を果たしていないことが示唆された。大動脈や腎から血管内皮細胞を初代培養することで詳細な検討を行うことが今後は望ましいと思われた。本研究を通じてmDia1は血管内皮機能調節においては主要な役割を有さない可能性が示唆された。血管内皮細胞におけるRhoエフェクター間のクロストークの存在は明らかではなかった。
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