研究実績の概要 |
私達が発見したFam13aは健康な脂肪組織で高い発現を示す一方、肥満マウスの脂肪組織ではその発現が著明に減少していた。脂肪細胞中のFam13aをノックダウンするとインスリンシグナルが減弱し、Fam13をHEK293細胞に過剰発現させるとインスリンシグナルは逆に増強された。そのメカニズムとしてFam13aはインスリンシグナル伝達分子のIRS-1とcoiled-coil domainを介して結合し、そのプロテアソームにおける分解を阻害することでインスリンシグナルを増強することがわかった。更にFam13aはセリン・スレオニン脱リン酸化酵素のPP2Aとcoiled-coil domain非依存的に結合し、PP2AをIRS-1にリクルートすることでIRS-1のセリン・スレオニンのリン酸化を抑制し、その結果プロテアソーム分解が阻害されることを明らかとした。Fam13aを欠損したFam13a-KOマウスは通常食を与えた環境でも野生型と比べて高いインスリン感受性を示し、高脂肪食を与えると野生型と同等に肥満するにも関わらず、インスリン感受性・耐糖能が良く維持された。Fam13a-KOマウスの白色脂肪ではIRS-1発現が増加し、インスリンシグナルが増強されていた。一方、脂肪細胞特異的にFam13aを過剰発現するaP2-Fam13a-TgマウスはKOマウスと反対にインスリン感受性が野生型よりも低下した。これら結果からFam13aは脂肪細胞中のIRS-1発現を高め、インスリンシグナルを良好に維持することで代謝恒常性を保つ新規分子であることがわかった。また肥満時に脂肪細胞中のFam13aが減少することが脂肪組織のインスリン抵抗性の原因であることが示唆された。これら結果は、PNAS 115, 2018に論文発表を行った。
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