研究課題/領域番号 |
16K09525
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 薫子 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (40399853)
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研究分担者 |
今野 哲 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (20399835)
牧田 比呂仁 北海道大学, 医学研究科, 客員研究員 (70533537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CT / COPD / 気管支喘息 / 肺動脈性肺高血圧症 / 末梢肺血管面積 |
研究実績の概要 |
これまで肺CTを用いた気腫・気道の定量的評価は報告されており、当該施設においても独自の3次元気道・気腫解析ソフトウェアを開発し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(AJRCCM 2006)・気管支喘息における気流閉塞に寄与する部位(Respir Med 2010)、ならびに気流閉塞の程度を揃えた両疾患の病態の差(Respir Med 2011)を明らかにし、さらには気管支拡張薬の拡張部位の同定へと応用した(tiotropium:Thorax 2009, salmeterol fluticasone propionate Euro J Radiol 2015, indacaterol/glycopyrronium Respir Med 2016)。一方、validationの困難さも影響し、血管病変に関する画像解析のゴールド・スタンダードは確立されていない。そのため肺内血流の定量的評価方法を確立し、COPD、気管支喘息、asthma-COPD syndrome(ACOS)における血流と気腫、気道病変の時相を含めた疾患の進行を明らかにすることを目標とし研究を進めている。特にCOPDにおける血管床低下の病態における位置づけは明らかとなっていない。まずはCOPD、気管支喘息、ACOS、肺高血圧症において現在汎用可能なNIH開発ソフトウェアを用いてCTによる肺内微小血管面積測定を行い、病態と照らし合わせ方法論の妥当性を検討し、改善すべき点を把握している段階である。気管支喘息・肺動脈性肺高血圧症においては同ソフトウェアによる肺内血管病変測定を用いた検討を論文化し、まもなく投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在肺内血管測定アルゴリズムを検索し、当科と3次元気道解析ソフトウェアを共同開発したAZE社に同アルゴリズムの実装が可能か提案中である。 1 北海道COPDコホート研究における気腫・気道・血管病変の経年変化 現在汎用可能なCTを用いた末梢血管面積評価はCT横断面の肺野面積に占めるcircularityが0.9以上である5mm2未満の面積の測定である。(%CSA<5(the percentage of total cross sectional area of small pulmonary vessels less than 5mm2)) そのパラメーターと肺気腫の程度は良く相関するが肺気腫はCT撮像時の肺気量に強く影響されるため、肺内のフラクタル解析による指標も用い肺胞破壊の程度として気道・気腫・肺内血管の経時的変化を検討中である。 2 北海道難治性喘息コホート研究における画像的特徴ならびに呼吸機能、血液・喀痰中マーカーとの関連 127人の難治性喘息患者と79人の軽症・中等症喘息患者がエントリーし、採血・喀痰・尿・呼吸機能検査・CT検査データが収集されている。その非喫煙者における肺拡散能パラメーター(%DLco %DLco/VA)の重症度による差、1秒率が70%未満の喫煙、非喫煙喘息とそれらの群1秒率の程度が同等なGOLD 軽症、中等症COPDにおける%DLco, %Kcoそれぞれの値、%DLco、%KcoとCTで測定した肺気腫・%CSA<5値の関連を検索し、論文化しまもなく投稿予定である。 3 肺動脈性肺高血圧症においても健常者と中枢肺動脈面積の指標である肺動脈本幹分岐レベルの肺動脈径 PA/同レベルの大動脈径Ao比と末梢肺血管面積の指標である%CSA<5の肺高血圧症の診断、血行動態把握における役割に関し論文化しまもなく投稿予定である。以上進捗状況から、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
COPD解析においては生物統計専門家の意見も取り入れ、気腫・気道・肺血管の評価をフラクタル係数、Pi10そして %CSA<5の特に1秒量の低下が著しかった急速低下群における動きを検討する。気管支喘息においては気道の不均一性に関し現在検討中で不均一性の指標を検索し、喀痰バイオマーカーとの関連を解析予定である。肺動脈性肺高血圧症における非喫煙下の閉塞性換気障害が実臨床において認められ、気道病変評価も予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
気腫・気道・血流解析ソフトウェアの開発に時間を要している。原因としてはアルゴリズムの実装困難さが挙げられるが、そのほか気道・気腫測定の精度向上に関しても相談中である。その開発と並行して当院核医学診療科との共同研究として核医学検査による肺内血流量測定の準備中である。平成28年度の未使用額は当該気腫・気道・血流解析ソフトウェアの開発費用として使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
気腫・気道・血流解析ソフトウェアの開発を実装可能な範囲で進める。費用・開発にかかる時間なども考慮し、血流測定の他のアプローチとして当院核医学診療科との共同研究として核医学検査による肺内血流量測定の準備中である。
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