研究課題
自己免疫性肺胞蛋白症は、GM-CSF自己抗体による肺胞マクロファージの成熟障害により発症する。しかし、GM-CSF自己抗体は自己免疫性肺胞蛋白症における重症度とは相関せず、予後予測因子にならないことが知られている。全肺洗浄術は自己免疫性肺胞蛋白症の標準療法として実施されているが、術の数か月後に改善する例や非洗浄肺の改善例を経験する。更には自己免疫性肺胞蛋白症の自然軽快もしばしば経験する。これらから、GM-CSF自己抗体以外の液性成分の変化によって、肺胞マクロファージが活性化され病勢の改善がもたらされていると仮説を立てた。本研究では、自己免疫性肺胞蛋白症で全肺洗浄術を受けた症例を対象に、サイトカインパネルを用いて血清の炎症性サイトカインを網羅的に測定している。全肺洗浄術を繰り返している症例において、胸部画像所見、呼吸機能の改善を認めている時期にある種のサイトカインの増加がみられているように思えた。肺胞蛋白症における全肺洗浄術を5例で行い、この洗浄前の血清を保管している。その後の臨床経過とサイトカインの変化につき検討中である。肺炎を併発した自己免疫性肺胞蛋白症において、肺炎発症後に肺胞蛋白症による陰影の改善を確認した。肺胞蛋白症において感染症併発後の陰影の改善は過去に報告をしているが(Akasaka K, BMC Pulm Med.15:88. 2015)、感染症併発時とその後の陰影改善時のサイトカインの変化についても検討中である。また、リポイド肺炎における全肺洗浄を行ったところ、左肺のみの全肺洗浄術を行ったが、その後の経時的変化で左肺のみならず右肺の改善を確認した。この症例についてもサイトカインの変化を確認中である。これらの検討により、肺胞蛋白症における病勢に関与するサイトカインの検索と、全肺洗浄術における病勢改善のメカニズムにつき解明していく予定である。
4: 遅れている
都合でどうしても関東への転居が必要となり2016年7月よりさいたま赤十字病院に勤務している。新潟大学へは非常勤講師として所属を続け、私の研究は研究室でなくても多くができるものであり研究を続けているが、移動してしばらくは研究環境を整えることができなかった。このため、1例報告を優先させているが、こちらも未だに仕上がっていない。現在は、週に半日の研究日を設けていて、研究を進められている。しかし、現在の勤務地で想定外に私の研究課題に該当する症例が集まり、そちらの診療に費やしている時間も長い。全肺洗浄術は手術室で行う手技であるが、半日の研究日にこれを行うこともあった。
現在の勤務先での環境整備と、新潟大学との伝達手段の方法は確立した。新潟大学の研究を担当する者を設け、連絡を密に取り合っている。さいたま赤十字病院の症例も新たに加え解析する。昨年、独協医科大学埼玉医療センターと福島県立医大の先生にも共同研究者となってもらったが、こちらの施設の症例も解析を進める。当初は全肺洗浄術を行った肺胞蛋白症症例のみが対象であったが、全肺洗浄術をしていなくても病勢の変化を示した拝勝蛋白症症例と、全肺洗浄を施行したリポイド肺炎症例を加え、サイトカインパネルの検討を行う。
(理由)検体収集とデータベース作成が主体であったため、出費がほとんどなく次年度使用額が生じた。(使用計画)測定を積極的に行い、海外学会発表も行い、論文作成を行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)
ERJ Open Res.
巻: 4 ページ: 00017
10.1183/23120541.00071-2017. eCollection 2018 Jan.
Ann Am Thorac Soc.
巻: 8 ページ: 1298-1304
10.1513