研究課題
自己免疫性肺胞蛋白症は、GM-CSF自己抗体による肺胞マクロファージの成熟障害により発症する。しかし、GM-CSF自己抗体は自己免疫性肺胞蛋白症の重症度とは相関せず、予後予測因子にもならないといわれている。自己免疫性肺胞蛋白症の治療法である全肺洗浄術により、術の数ヵ月後に改善する例や非洗浄側の改善例を経験するので、この療法は単に肺胞内の洗浄をするだけではなく何らかの免疫学的変化をもらたすものと考えられる。また、感染症合併後に改善を示す症例が存在する。これらから、GM-CSF自己抗体以外の液性成分の変化により、肺胞マクロファージが活性化され病勢を改善させている可能性があると考えた。GM-CSF吸入療法以外の治療で改善を示した症例につき、サイトカインパネルを用いて、疾患改善時のサイトカインを網羅的に測定している。全肺洗浄術を繰り返している症例において、胸部画像所見で改善を認める症例は、Host defenceを高める方向にマクロファージを活性化することで病勢を改善しているように思えた。すなわち、IFN-γ, IL-12といったM1マクロファージへ誘導するサイトカインが増加する時期があるように思えた。臨床経過としては1) 全肺洗浄術後に改善を示す症例は対側の改善も得られること、2)術直後よりもその後に改善傾向を示すこと、3)肺の感染症合併後に肺胞蛋白症の改善も得られること、のこれらは決して稀ではなく起こることが確認された。このような症例におけるサイトカインの変動が傾向が普遍的なものであるのか症例を集積して詳細に検討していく予定である。
3: やや遅れている
都合でどうしても関東への転居が必要となり、現在はさいたま赤十字病院に勤務している。新潟大学へは非常勤講師として所属を続け、私の研究は研究室でなくても多くのことができあり研究をつづけているが、しばらく研究環境を整えることができなかった。しかし、症例は蓄積し、検体も蓄積している。臨床的に興味深い経過を示す症例の解析が進められており、これらをこれからまとめていく。
いままでの蓄積した臨床データとサイトカインパネルの結果をまとめ上げ、論文作成にとりかかる。今まで集めたデータは、新潟大学、独協医科大学越谷病院、福島県立医科大学、埼玉赤十字病院のものである。それぞれの施設の研究分担者とも協力してまとめ上げていく。
(理由)検体収集とデータベース作成が主体であったため、出費が少なく、次年度使用額が生じた。(使用計画)測定を積極的に行い、論文作成を行う。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
ERJ Open Res.
巻: 4 ページ: 00017
10.1183/23120541.00071-2017. eCollection 2018 Jan.