研究課題/領域番号 |
16K09541
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大下 慎一郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (50508132)
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研究分担者 |
志馬 伸朗 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (00260795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / 急性呼吸不全 / 指定難病 / 予後 / 生存率 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,以下の点について研究を実行し成果を得た. ①間質性肺炎の疾患感受性遺伝子と報告されている17種類の遺伝子(ANGPT2, Caveolin, HER2, MUC5B, TOLLIP等)について,そのSNPと人種差,特発性肺線維症急性増悪発症率の相関を解析した.その結果,TERT,HMOX1,DPP9のSNPは,間質性肺炎急性増悪の発症と有意な相関があり,多変量解析の結果では,TERT,HMOX1の2種類のSNPが,間質性肺炎急性増悪の独立した危険因子であることが明らかになった.しかしなお,日本人種は,これらのSNPとは独立した間質性肺炎急性増悪の危険因子であることも分かった.つまり,日本人には,これらの遺伝子多型とは別に,間質性肺炎急性増悪の危険因子が存在していることを示している. ②間質性肺炎急性増悪の発症危険因子として,日本人高齢者に高率に感染しているヘリコバクター・ピロリ菌の関与を解析した.多変量解析の結果,血清ヘリコバクター・ピロリ抗体価が高値である患者は,高率に間質性肺炎急性増悪を発症することが明らかになった.しかしなお,日本人種も独立した危険因子であったことから, ヘリコバクター・ピロリの潜在感染とは別に,間質性肺炎急性増悪の危険因子が存在していることを示している. ③間質性肺炎急性増悪の発症危険因子として,さらに口腔内細菌叢の関与について解析を開始した.日本人・ドイツ人の間質性肺炎患者血清を使用して,主要な口腔内常在菌16種類の抗体価を解析しているところである. ④間質性肺炎急性増悪の発症危険因子として,好中球の転写因子ファミリーの1つであるCCAAT/enhancer binding protein(C/EBP)の解析を開始した. C57BL/6マウス(8~12週齢)に感染などのストレスを加えた後,骨髄細胞を採取し,real time PCR法を用いてC/EBP familyの遺伝子発現を解析しているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床データベースのアップデート,特発性肺線維症急性増悪の疾患関連遺伝子の同定・SNP解析については,大きな問題なく進行している.発症危険因子としての感染症については,Helicobacter pyloriに関する解析がほぼ終了し,次は口腔内細菌叢の関与について解析を開始している.好中球機能については,マウスを使用した実験系を確立し,遺伝子発現の解析を開始したところである.
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今後の研究の推進方策 |
口腔内細菌叢が間質性肺炎急性増悪に与える影響を,国際人種比較も行いながら検証していく.また,マウスを用いて様々な炎症・感染などの刺激を与え,好中球転写因子C/EBPβが肺線維化に与える影響を解析していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由>実験の進捗状況に伴い,必要経費に変更が生じたため. <使用計画>これまでの基礎的検討で,種々の潜在感染症や好中球機能が肺線維化に影響を与えている可能性が明らかになってきた.次年度は,口腔内細菌叢関連抗原の血液中発現量をELISAで測定するとともに,種々の刺激を与えたマウスにおける好中球転写因子C/EBPβ発現量をリアルタイムPCRで測定する予定である.
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