研究実績の概要 |
<平成30年度> ①間質性肺炎急性増悪の発症危険因子として,口腔内細菌叢による潜在感染症の関与について解析を継続した.特発性肺線維症140名(日本70名・ドイツ70名),健常者260名(日本100名・ドイツ160名),および細菌性肺炎30名のコホートを使用して,口腔内常在菌16種類の抗体価を解析した.その結果,急性増悪発症率に対して促進的に作用する細菌と防御的に作用する細菌があることが分かった. ②C57BL/6マウスにブレオマイシンを投与し間質性肺炎動物モデルを作成した.気管支肺胞洗浄液中・肺組織中における,好中球転写因子C/EBPの発現解析(real time PCR)・ELISAを行った.しかし,いずれの検討においても,C/EBP familyの発現は,健常マウスと比較して有意差を認めなかった. <研究期間全体(平成28~30年度)> ①ドイツと複数回の連携を取り,日本・ドイツの間質性肺炎患者コホートのデータを追跡調査し,予後・急性増悪発症率をアップデートした.日本人の急性増悪発症率はドイツ人比べ有意に高率であることが確認された(15% vs 8%). ②日本人・ドイツ人IPF患者血清を用いて,Helicobacter pylori・口腔内細菌叢16種の抗体価を評価した.その結果,血清H. pylori抗体価2.3 U/mL以上は,IPF急性増悪の危険因子であることが分かった.口腔内細菌叢では,抗体価が高値であるとIPF急性増悪の発症率が高くなる細菌(Porphyromonas, Tannerella, Campylobacter)と, 逆にIPF急性増悪の発症率が低くなる細菌(Aggregatibacter, Prevotella, Fusobcterium)があることが明らかになった.TannerellaとAggregatibacterの比が高値である患者は,有意に高率に急性増悪を発症することが明らかになった.
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