前年度までの評価で、セロトニン刺激(濃度依存性)で細胞透過性の亢進を、ヒト肺微小血管内皮細胞株(HPMEC)を用いて行い、その反応をベースにセロトニントランスポーター阻害剤とRhoキナーゼ阻害剤との共培養での細胞透過性亢進が減弱することを確認した。当院の敗血症性ショック患者と健常人の血漿を用いて、セロトニン代謝産物(5HIAA)を測定し、敗血症性ショック患者群で有意に5HIAAが上昇し、SOFAスコア、APACHE-IIスコアやP/F比など敗血症性ショックの重症度スコアとの有意な相関も証明し、セロトニンの代謝が敗血症性ショックの血管透過性亢進の病態に重要な役割を果たしていることが示唆され、その機序にRhoキナーゼも関与していることが考えられた。血管透過性亢進が同様に機序として考えられているARDSの臨床検体(ヒト血漿)でも同様の解析を行う目的で、当院での検体採取を試みたが、症例数が少なかったため、米国NIHより臨床検体の供与を受け、解析を行ったところ、敗血症性ショックを合併しているARDS群が敗血症性ショック非合併のARDS群よりも有意に血漿中5HIAA値が高いことが証明された。 敗血症性ショックとARDSの病態と同様の機序が考えられるが、テーマと分けて、現在、敗血症性ショックの結果に絞って論文投稿中である。
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